倉敷物語


 四年前の夏の暑い日の事だった。今年のギャラリーコンサート出演者の一人に、このCDの

演奏者を招待したいと言うAさんのたっての希望を実現するために「六ッ森 ケイ子」さん宅を

訪ねる事になった。

 六ッ森 ケイ子さんはお琴の奏者である。彼女のご主人を私が知っていることもあって、私が

アポをとった。以来、六ッ森 さんへの出演依頼は私が担当している。

 その日訪問したのは、児島文化協会事務局長のK君、出演依頼を熱望していた事務局員の

Aさん、そして、私の三人だった。六ッ森 さんの自宅では和楽器を売っている。店先には色んな

和楽器がところせましと並べられていた。

 六ッ森ケイ子さんは、ご主人とミュージシャン仲間と共に幅広く演奏活動をしている。また、

演奏活動の傍ら子供達にお琴を教えている。一度、朝日新聞の特集版に大きく掲載された

こともあるくらい有名な人である。

 夫唱婦随とは、この夫婦の事を指しているのではないかと思うくらい仲の良い夫婦である。

ご主人は、誠に社交的な人であり交友関係も広い。自宅の和楽器店経営の傍ら自らも尺八を

吹いて演奏活動を続けている。いわば夫婦共にミュージシャンなのである。

 私達はかねてより秋になると児島市民文化祭という規模の大きい展示会や音楽コンサート、

芸能発表会等を行っている。そうした行事の一環として、ギャラリーコンサート等といった洒落

た企画も行っている。

 以前は作家の小川洋子さんなどを招待して講演をして貰った事もある。ギャラリーコンサート

の会場は、倉敷芸術村の村民である芸術家達の作品を展示している。倉敷芸術村は、児島

文化協会事務局長であるK君が個人的な繋がりで作った文化人や芸術家の集まりである。

 年に一度、児島市民文化祭の行事の一つとして、こうした人達に出展を願い、絵画を中心に

した展示を行っている。そして、この展示会場で地元の文化向上に功労のあった人を表彰し、

その栄誉をたたえるために記念コンサートを開いている。これがギャラリーコンサートである。

巨大な抽象画をバックに混成合唱や器楽演奏等が行われている。

 ギャラリーコンサートを始めた頃は知名度も低く聴衆も少なかったが、ここ数年、年を追う

毎に来てくれる人が増えている。それも「六ッ森 ケイ子とその仲間達」という出演者の影響

かも知れない。少ないギャラながら毎年欠かさず出演をしてくれ、出演依頼者としては大いに

感謝している。

 その六ッ森 ケイ子さんに出演依頼に行ったときの話である。私達の企画のあらましを説明

し終わった後に、K君からこんな話が出た。実は倉敷美観地区の少し外れに「いがらしゆみこ

美術館」がある。「いがらしゆみこ美術館」は漫画家のいがらしさんが倉敷の街が好きになって

建てた個人的な美術館である。K君が何故いがらしさんと知り合いになったのか、詳しく聞いた

ことがないので分からないのだが、彼女の作品を児島市民文化祭の展示会場の一角に展示

したことがあった。

 そんな彼女との懇意な間柄の中で「倉敷物語」という漫画を書いてみたいという話があった

ようだ。採算がとれるだけの部数を売り切るだけの準備が出来れば描いても良いという話で

あったようだ。主人公は倉敷で生まれ育った女性である。この地方では男勝りでしっかりした

女性のことを「はちまん」という。土佐の方では「はちきん」と言うらしい。何処にもどんな時代

にもそんな女性はいるものらしい。「はちまん」は、しっかりものでありながら愛らしい女性でも

ある。時代は明治末から大正を経て昭和の初期頃のことであろうか。大原孫三郎氏や石井

十次氏などが活躍した時代である。

 この話を聞いた倉敷生まれの倉敷育ちの女性であった六ッ森 ケイ子さんには何かひらめく

ものがあったようだ。そうして生まれたのが「倉敷物語」という曲である。後に児島市民文化祭

のギャラリーコンサートで混成合唱をバックに演奏するときに歌詞が出来た。そして、混声

合唱団「パストラーレ」と共に演奏が行われた。素晴らしい演奏であった。

 曲には倉敷のたたずまいや子供の頃遊んだ路地裏のさりげない情景が織り込まれている。

曲も良ければ歌詞も良い。倉敷で幼少期を過ごした人でないと作れないような曲である。

 私の希望を言えば五十嵐さんの漫画が出来、その漫画が映画化されるようにでもなれば、

この「倉敷物語」という曲は広く全国に知られるようになることは間違いない。そんな曲なの

である。

追記

 実は昨晩(2007年12月22日)倉敷芸文館で六ッ森 ケイ子とくらしき1988、20周年アニ

バーサリーコンサートが開かれた。六ッ森 ケイ子さん風に言わせれば児島三人衆、K君、

Aさん、そして私と三組の夫婦が共に招待を受けた。

 素晴らしいコンサートであった事は言うまでもない。今回は記念企画と言うことで六ッ森

ケイ子さんの先生である沢井一恵さんも特別出演されていた。お琴という日本の伝統楽器を

使い、オリジナルで今風な曲にのせて演奏をする、こんな企画を二十年前から始めた六ッ森

夫妻とその仲間の皆さんに心から拍手を送りたい。

曲を紹介できないのは誠に残念だが、せめて歌詞だけでも紹介しておこう。

「倉敷物語」

作詞六ッ森 ケイ子 補作詞ヒライタケシ

作曲六ッ森 ケイ子 編曲六ッ森 ケイ子

1.思い出は 胸の中 懐かしき 通り雨

  待ち合いし 白壁も濡れている 頬なでる 柳風

  セレナーデ 優しく包み ふたり時を越えて

  微笑みし 君の面影 灯りに 揺れている

  ゆらゆら かげろうゆれる きらめく汐入り川よ

  いつかは逢えるね きっと 「そう」信じていたい

  夕焼けが ふたりを染めて 歩く石の小道

  いつまでも 淡き影絵が 灯りに 揺れている

  ゆらゆら かげろうゆれる さよなら 懐かしの街

  いつかは逢えるね きっと さよなら汐入りの川

  さよなら 思い出浮かぶ さよなら 懐かしの街

  いつかは逢えるね きっと 「そう」君想う街

今回、この倉敷物語にちなんで「倉敷物語」という焼酎等が売り出されました。

下記のサイトにアクセスしますと購入方法などが掲載されています。

                        有限会社 六ッ森 楽器店

                                       2007年12月23日掲載

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