皇位継承問題を考える

 天皇家の次期継承者に男子がいないことから女性天皇が検討されている。私は、それはそ

れで良いのではないかと思っている。天皇家の長い系譜をたどると奈良時代以降は確かに男

性天皇が皇位を継承してきたようだ。しかし、それ以前から神話の時代には女性天皇も少なく

なかった。卑弥呼が現在の天皇家の祖先かどうかは分からないが、シャーマンとしての存在意

義が大きかった頃は女性が政治の中枢にいたのではないだろうか。その後、後継者争いの中

で武力に長じた男性が中心になってきたようだ。

 先日の新聞に三笠宮様が女性天皇に異議を唱えているという記事が載っていた。天皇家は

万世一系、百二十五代、神話の時代の神武天皇から連綿として一度の例外もなく「男系」で通

してきたと述べられている。しかし、それが出来たのは天皇に多くの側室が居たからであり、今

のような天皇家に嫁ぐ人さえ決まらない状況の中で、この制度を維持することは非常に難しい

のではないだろうか。

 今の世の中は、天皇家だけを特別扱いにしてはおかないような勢いで大きく変化している。

かつて皇太子の妃がなかなか決まらないような事はなかったはずである。しかし、雅子様が皇

太子妃になるまでは長い紆余曲折があった。今の時代はそう言う時代なのだという認識があ

っても良いのではないだろうか。

 さて、皆さんは自分の戸籍謄本を取り寄せた事があるだろうか。私は自分のルーツを調べる

ために請求できる限りの戸籍謄本をすべて取り寄せた事がある。しかし、父方の戸籍も母方

の戸籍も明治以降のものしか送って貰えず、それ以前のものはないと言われた。実際に無い

のか、あっても出せないのかは定かではない。ないという理由は部落差別をなくすためであった。

 余談になるが各人の戸籍を消しても部落差別はなくなっていない。部落差別をなくすという理

由のために、貴重な私達の明治以前の戸籍は消えてしまったのである。天皇家には百二十五

代の戸籍が残っていて私達一般庶民には無いというのも差別では無いだろうか。しかし、自分

という存在がある以上、天皇家と同じように連綿として受け継がれてきた私達自身の系譜があ

ったからである。ただ、その系譜が消されてしまい、残っていないだけのことである。

 天皇家は長い長い日本の歴史の中で断片的に政治の表舞台に登場してきただけで、長くは

象徴的な存在であった。天皇が表舞台に登場したときには必ず日本国中を巻き込むような大

きな争いが生じている。憲法が定めているように天皇は象徴である方が良い。その方が天皇

家にとっても幸せな事である。

 亡くなられた昭和天皇は、かつて軍閥によって否応なく政治的決断を迫られ、したくもない戦

争の指揮を強いられてきた。一個の人間に、あまりにも大きな責任を負わせ続けてきたのであ

る。実に気の毒な事であった。如何に優れた人間だと言えども人間は人間である。判断力にも

自ずと限界があることを忘れてはならない。

 さて、話を戻そう。三笠宮様の思いは思いとして、今は女性天皇ありきでも良いのではない

だろうか。そして、万世一系という考えは捨てた方が良いと思う。万世一系などと言わなくとも

世界中の人はみんな同じように連綿として祖先からの血を受け継いできた人達だ。アラブ系

の人達の中には戸籍謄本には書かれていなくても自分の祖先の名前を言える人がたくさんい

るようである。彼らは、そのことを誇りに思っている。かつて被差別部落と言うところに生まれ

てきた人達も私達と何ら変わることのない一個の人間である。遠くさかのぼれば同じ祖先から

生まれてきた人間である。

 祖先の事を語るとき、もう一つ忘れてはいけないことがある。それは自分という存在である。

私達が子供だった頃、おじいさんやおばあさんや親戚のおじさんやおばさんから自分の先祖

のことを何となく聞かされて大きくなってきた。核家族化した今の家庭の中で語られることがあ

るのだろうか。占いの細木数子さんは自分の占い結果を語るとき、先祖様を大切にしなさいと

か、先祖様がいたから今の自分があるのだと言うことを考えたことがありますかと相手に問い

ただしている。

 私もその通りだと思っている。自分の存在があるのは遠い過去から連綿として受け継がれて

きた命の受け渡しがあったからこそ、この世に自分が誕生したのである。そう考えると、簡単

に人の命を奪うことや、自らの人生を粗末には出来ないはずだ。

 私は分かる限りの私や私に関連のある人達の歴史を書き残したいと考えている。だからこそ

戸籍謄本を取り寄せたのだが、その戸籍謄本には明治以前はまったく書かれていないのであ

る。残念でならない。

                                   2005年11月20日掲載

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