混迷するイラク情勢

 イラクは、アメリカとイギリスの連合軍侵攻以来いまだに混沌としています。暫定政権作りが急がれて

いますが、当初の予定である6月の発足は難しそうです。私は、イラク人にはイラク人にしか理解の出来

ない思いがあり、アメリカが考えているようにフセイン政権さえ倒せば何とかなるようなものではないと

書いてきました。イラクやイランをはじめ中東各国は、ペルシャ帝国やそれ以前の長い長い歴史のある

国々ばかりです。その上、その歴史を背負った色んな民族が複雑に混在しています。

 フセイン政権を倒したとは言いながら、ベトナム戦争当時のような泥沼状態であり、いつ終わるとも

知れない戦争状態にあります。おまけに、イスラム教そのものを敵にまわして戦っているような感じに

なっています。

 そして、イラク人の60パーセントを占めるシーア派の人達との間に激しい闘いが始まっています。

シーア派はイラク人の大半を占めながら、フセイン政権時代には虐げられてきました。フセイン政権

がなくなった今、今度こそという思いがあったに違いありません。ところが思惑とは異なり、主導権は

クルド人に握られています。

 アメリカには、アメリカの操縦しやすい政権を作り、アメリカの利権を確保したいという下心があります。

従って、操縦しやすいクルド人を新政権の中心座らせているのではないでしょうか。長い歴史をしたたかに

生きぬいてきた人達に、そんな下心は通用しません。彼らは、いかに傷つこうとも歯をくいしばって抵抗

するに違いありません。

 そんな分かり切った事が何故理解出来ないのでしょうか。アメリカは世界一と言われる情報網を持って

います。豊富な情報を持っていながら、具体的な行動となると、まるで子供のようです。自分の都合の

良いように解釈して、まったく先のことしが見えていません。

 ベトナム戦争の時には、フランスが手を焼いた戦争に自ら介入し手痛い教訓を得たはずです。その

教訓が何故生かされなかったのか、不思議でなりません。また、この愚かなアメリカに追従している国々も、

それぞれの事情があるのでしょうが、いずれにせよおおばか者だという他はありません。ベトナム戦争の

時には沖縄が戦争の兵站地になりましたが、戦争には荷担しませんでした。憲法があったからです。しかし、

今回は国際支援という名目で自衛隊を派遣してしまいました。最早、引き返す口実はなくなったかに見え

ますが、ただただ深入りをしないように祈るばかりです。

 こんな記事を書いているときに、とんでもないニュースが飛び込んできました。ボランティアとしてイラクで

活動していた日本人3人が何ものか分からない集団によって拉致されました。犯人グループは、日本政府

に対し、3日以内に自衛隊をイラクから撤去させるようにとの要求を突きつけてきました。これに対し、

小泉首相は、すぐさま自衛隊は撤去させないと言う声明を出しました。この声明が犯行集団に届いているか

どうか分かりませんが、3人の安否が非常に心配です。

 こんな事件が起きて考えることは、そもそも自衛隊を戦地イラクへ送ることに何の意味があったのだろうと

言うことです。フランスやイタリアやドイツなどヨーロッパの主立った国々は軍隊を出していません。本当に

イラク復興に繋がっているのでしょうか。少なくとも私にはアメリカへの義理立てにしか見えないのですが。

 それにしても一国の首相が下した決断の重さを感じます。あえて危険なイラクにボランティアとして赴いた

3人の事を考えると、彼らを危険なめに合わせているのは小泉首相の独断と偏見によるものです。大いに

反省するとともに、今は全力で救出に当たって貰いたいと思います。

                                             2004年4月11日掲載

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