切れる

 

 新聞紙上では毎日のように色んな事件が報道されています。あまりにも多すぎるので不感症

気味になっている自分を恐ろしく思うことさえあります。そんな事件の中でも理由なく人を殺す

事件には、さすがにショックを隠し切れません。何故なのだろう。彼の(彼女の)心の中には何

があったのだろうと、いつも疑問がつきまといます。

 「バカの壁」という本を執筆された解剖学の権威である養老猛先生は、心理的なものだけでは

なく解剖学的にも調査してみる必要があるのではないかと自著の中に書かれています。人間は

脳の中に人間だけに特別に発達した前頭葉という部分を持っています。この前頭葉は動物的

な攻撃本能を押さえるための働きを持っていると言われています。その働きが弱くなると人間

の感情は押さえられなくなり暴走すると言われています。

 本来、感情の暴走を押さえているのは理性なのですが、この理性の働きが弱いと、いわゆる

「切れる」という現象になって現れるようです。

 養老先生は近年顕著にこの傾向が強くなっているのは、病理学的に何か原因があるのでは

ないかと書いておられます。その原因の一つに環境ホルモンの影響を上げられています。私達

より何年か後輩は胎児の時から環境ホルモンの影響を受けてきました。生まれてからも影響を

受け続けています。水中に生息するものの中には雄が雌化してしまうといった事も起きているよ

うです。また、環境ホルモンと言われる化学物質には色んなものがあるようですが、どんな化学

物質が環境ホルモンで、その化学物質が生物にどんな影響を与えているのか、ほとんど分かっ

ていません。

 ことに脳に関する影響は人権問題という壁があって調査が難しいようです。そんなわけで深刻

な問題であるにも関わらず対策の立てようがないと書かれていました。環境ホルモンの影響が

生殖機能の異常だけでなく、家庭内暴力や幼児虐待、ドメスティックバイオレンスやストーカー

問題、果ては凶器を持って突然襲いかかってくるような人間の増加に繋がっているとしたら実に

恐ろしいことです。

                                2005年4月18日掲載

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