先日、「ディープブルー」と言う題名の映画を見ていて、非常に違和感を覚えたのがきっかけで、

それまでの恐怖感が、いっぺんに興ざめになってしまったという話である。

 かつて、アメリカ映画で「ジョーズ」と言う題名の映画が大ヒットした事がある。鮫を主役に

した映画である。ディープブルーも鮫を主人公にした映画である。アメリカ人は何故にこう

までも、鮫が好きなのであろうか。とにかく、アメリカ映画には、この映画や「ジョーズ」以外にも、

多くの鮫を題材にした映画がある。

 今回の映画は、アルツハイマー病の治療薬を作るために、鮫の脳を利用すると言う設定で

あった。そのために、禁止されている遺伝子操作の技術を使い、研究用の鮫の脳を、巨大化

させてしまった。鮫の脳は、巨大化することによって、思考力を持つようになり、その結果、

次々と人間を襲うようになってしまう。海に浮かんだ研究所では、鮫から治療薬を取り出すため

の実験が始まっていた。おりしも、その研究所をハリケーンが襲う。実験中の鮫が近くにいた

研究者の一人を襲ったのがきっかけで、事件が波及的に広がっていく。施設が破壊され、檻から

解き放たれた鮫が、浸水した施設内を泳ぎ回り、研究所の人間を次々と襲い、恐怖に陥れると

言うものだった。

 そして、人間と鮫の息詰まるような戦いが始まる。その過程において、鮫を殺す手段の一つと

して、電気が使われる。基地の電気は事故とハリケーンのダブルパンチで停電をしている。発電

を再開するためには、配電盤のスイッチを入れなければならないのだが、その配電盤は、海水の

中に浸かっている。ダイバーが水に潜って、その配電盤のスイッチを投入する。いかに海上の設備

とは言え、防水程度のことはあっても、常識的に完全密閉などと言うことはあり得ない。ましてや

電気と海水という取り合わせは、どう考えても水と油の関係である。一旦、水没したものや、ましてや

海水に浸かったものの電源が、投入できるはずがないのである。

 女性研究者が鮫に追いつめられて、壁際の配線を引きちぎって、鮫を感電させるというシーンも

ある。女性は一応、自分の着ていたウェイトスーツを脱いで、感電防止のために、濡れた床の上に

敷くのだが、今まで水に浸かっていたウエイトスーツである。自分自身の体も水に濡れている。

引きちぎった配電線を素手でつかみ鮫に押し当てる。それで鮫が感電死するものかどうかも

分からないが、自分自身が感電せずに、相手だけをやっつけるなどと言うことは、おおよそ不可能な

事である。(電気は水に浸かったり、水に濡れたりすると漏電をしてしまう)

 最後のシーンでは、鮫を爆破して殺してしまうのだが、このシーンも、何故、爆破出来たのか

良く分からない。いかにフィクションとは言え、もっと、きちんとした考証に基づいて描いて欲しい。

 先日見た韓国映画の「シュリ」と言う映画にも、こんなシーンがあった。サッカー場の照明を切る

シーンであった。変電所のトランスのところで、電源を切ろうとするものと、そうさせまいとするもの

が相争う。巨大な施設の電源としては、いかにも小さいし、その電源スイッチが、実にちゃちな

スイッチで、こんなもので、高圧の大電流が流れるような回路を、切ることが出来るのだろうか。

電気の知識を多少聞きかじったものとしては、いささか気になるところではあった。格闘のすえ、

相手をやっつける手段として、電気が用いられることは、他の映画にも良く見られるシーンだが、

電気屋として、その用いられ方に違和感を覚えることが少なくない。全てが正確にとは言わない

までも、ある程度は電気の性質や、扱い方の正確さだけは、おろそかにして貰いたくないと思う

のである。映画を見ている人の中には、私のように、電気の専門家もいると言うことを多少考え

て制作して貰いたいのである。私自身も、映画は娯楽なんだから、そこまで考えなくても良いの

ではと思ったりもするのだが、一旦、気になり始めたらしらけてしまう。やはり、映画と言えども

リアル性は必要であり、そのための仕掛け作りには、十分な配慮が欲しいと思うのは、私だけ

であろうか。ちょっと気になった映画の話である。

                                           2001年3月18日掲載   

シネマの世界へ戻る

ホームへ戻る