風は無限のエネルギー

 かつて児島の下津井港は北前線の出入りで賑わった港町です。最盛期には百艘を超える帆船が入港したと言いますから、

その壮観さは想像にあまりあるものがあります。

 このように昔は大型船と言えばすべて帆船でした。帆船は風を帆で受けて走るのですから、燃料は要りません。もちろん

騒音もしません。風を動力源に北海道からニシンや数の子等を満載し、関門海峡を抜け下津井港までの長い長い航海を

してきたのです。日本海沿岸にも瀬戸内海にも点々として風待ち、潮待ちの港がありました。こうした港は船の出入りに

よって賑わいました。北前船が運んだ民謡が各所に残っています。下津井節もその一つだといわれています。

 帆船は北前船ばかりではなく太平洋側も走っていました。上方(京阪神)から出発し江戸に向かう船です。檜垣回船と

いいました。有名なのは紀伊国屋文左衛門の船などです。紀州のみかんや材木を江戸に送り大商いをしました。江戸は

大消費地でしたから、地方からたくさんのものが帆船で運ばれました。中でもお米は最も重要な商品でした。こうして日本

列島沿岸はくまなく帆船によって航路が確保され、多くの品物があちらこちらへと行き交ったのです。

 今はその代わりを道路が果たしています。大型のトラック便が、毎日、道路をたくさん行き交っています。東京都はこれら

ディーゼルエンジンで走るトラックの都心への乗り入れ制限を始めました。あまりにも排気ガスの被害がひどいからです。

一説によりますと花粉症は排気ガスとの関連が非常に濃厚だとも言われています。大量の燃料を消費し、大きな騒音と

振動をまき散らしながら、傍若無人に走り回る大型トラックを見ていますと、本当に、このままで良いのだろうかと思います。

 そこで、もう一度振り返って見たいのが無限とも言える自然エネルギーの利用です。すべてを風まかせとはいかないまでも

風を補助動力とした船の輸送を真剣に考えて見たいのです。幸い日本は周辺を広大な海に囲まれています。この広い海を

交通に利用しないと言うのは、いかにも、もったいない気がします。多くの経費がかかる道路より全く維持費の必要のない

海は、資源枯渇が叫ばれ環境問題が大きく取り上げられている今の世の中においては、もう一度考え直してみたい輸送

手段です。

 船はトラックや鉄道とは比較にならない大量の品物を一度に運ぶことが出来ます。港が整備されていれば、そこに荷下ろし

をして、そこからトラックで必要な場所まで運べば良いのではないでしょうか。そうすればトラック業者の仕事を奪うこともなく、

公害のない省エネルギーの輸送システムが作れると思うのですが。

河川もまた重要な交通路

 輸送手段としての海の重要性を見直してきましたが、川も又、有用な輸送手段です。岡山県には大きな川が三本、県北

から瀬戸内海に向かって流れています。東から吉井川、旭川、高梁川です。これらの河川には川船が利用されていました。

かの高瀬舟の原型が岡山県の川船だといわれています。

 川は昔から大切な交通路でした。山深い日本では川筋に早くから道路が開かれ、その川を輸送手段に使ったとしても

不思議な事ではありません。当時、使用された荷の積み卸し場所や使われていた川船が再現され保管されています。

結構、大きな船でした。あるものは緩やかな流れの中を帆を揚げて走ったようです。風のない時や帆船でない川船は

人力によって川上に引かれて行きました。山奥からは農産物や炭や薪が運ばれ、川下からは塩やお米、衣類などが

運ばれていったようです。

 現在、大きな川には各所に関所のような堰が設けられ、ダムによって川の流れは細くなっています。このままでは川を

輸送手段に使用することは難しそうですが、その気になって整備をすれば運河のように利用することも不可能な事では

ありません。

 かつての三内丸山遺跡は海に向かって開けた交通の便利なところだったようです。従って、山中を通るよりは海を走行

する方が便利であったに違いありません。縄文時代や弥生時代には山中は鬱蒼として木が生い茂り容易に人が分け入る

ことが出来なかったに違いありません。その代わり海岸や川筋には行き来に障害となるようなものも少なく割合開けていた

のではないでしょうか。その証拠に今でも主要道路は海岸や川筋を走っています。従って、いくら通行しにくいとは言っても

山深い山中を歩くよりは、こういったところの方が歩きやすかったのではないでしょうか。その当時の名残かも知れませんが、

海岸や川筋の交通の難所には今も大歩危、小歩危や親不知、子不知といった地名が残っています。

                                                        2002年1月3日掲載

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