刀剣の魅力 

 岡山県には鉄に関する遺跡がたくさんあります。中には弥生時代にまで遡るものもあると言わ

れています。鉄はいったい何のために開発され生産され、今日までの歴史をたどるようになった

のでしょうか。

 鉄を必要とするものには大きく分けて二つの流れがあると思います。一つは農具を始めとする

生活用品として、もう一つは刀や槍等の武具としての用途ではないでしょうか。鉄器が発明され

開発されるまで、代用品は石器であり青銅器でした。いずれにも多くの欠陥がありました。石器は

加工しにくく破損しやすいという欠点です。青銅器は銅と錫との合金であるということから材料の

入手が難しく高価なものであることでした。いずれの材料も生活用品として使うにしても、あるいは

武具として使うにも量産は難しく、広く行き渡るには無理がありました。

 その点、鉄は材料の入手という面から見れば無尽蔵と言って良いくらい私達の周辺にあります。

ただ難点は量産ということでした。「たたら」という製法が確立して以来、飛躍的に大量生産が可能

になりました。たたらの歴史については別のページに掲載している通りですので重複は避けます

が、原料となるべき砂鉄(磁鉄鉱)と大量の炭が確保できれば製造は比較的簡単でした。日本は

山国ですから炭の材料となる薪の木はたくさんあります。人手さえあれば砂鉄も簡単に採取でき

ます。こうして世界でも有数の鉄の量産国になったのです。

 その用途の多くは戦争の道具である槍や刀でした。岡山県周辺は鉄の生産が盛んであったと

同時に、古くから刀の生産地でもありました。有名な備前刀である長船や古刀で有名な備中青江

といったところがあります。今でも全国の収集家の手元や美術館、博物館には長船や青江といった

ところで製作された刀剣が少なくありません。

 刀剣は江戸時代に入るまでは実戦の道具でした。しかし、江戸時代以降は美術品としての歴史を

たどることになります。私自身、外国の刀剣を数多くは見てはいませんので、これらと比較しての

意見を持ち合わせていませんが、日本刀に勝るものはないのではないでしょうか。日本刀の姿形は

単に武器としての価値よりは、美術品としての価値を問いたいほど、実に洗練された作りをしている

と思っています。

 独身時代、倉敷の天満屋で美術刀剣の展示販売があった際、多くの刀剣の中で比較的価格も

安く(当時の金額で30万円位)、無名(作者の銘が刻まれていないもの)ではありましたが、いか

にも刀剣らしい質実剛健といった作りの胴太抜きに惚れ込んでしまいました。買おうかどうしよう

かと、さんざん迷ったのですが、無名と言うことにいささか抵抗があって、とうとう買うことが出来ま

せんでした。今でも買っておけば良かったと後悔しています。

 私の刀好きは子供時代からの事で、何故そうなったのかは分かりません。ただ刀の美しさに

あこがれていたという他はありません。むろん子供の事ですから刀剣など待てるはずもなく、その

頃は友達がヤスリを刀の形に整え、研いだものを譲り受けて持っていました。しかし、本物の刀剣

に対するあこがれは、ずっと持っていました。

 近年になって、刀剣を買い求めるほどの情熱は失せてしまいましたが、展示会や博物館、歴史

資料館等に足を運び、これらの展示品を眺め楽しむことは続けています。磨き上げられて鏡の

ように光り輝く刀身には吸い込まれそうな凄みを感じます。そして刀の美しさは、あの微妙な反りの

美しさではないでしょうか。刀の反りは本来武器として相手を傷つける際、力の一番入りやすい形

に整えてあるのだとは言いますが、その目的とは異なった美しさを秘めているように思えます。

 刀剣の良さは姿形にあるのはもちろんのこと、刀の製作工程そのものにも大いなる魅力があり

ます。玉鋼(やまはがね)から始まり、鍛えに鍛えて次第に形を整えていく工程には刀匠の魂が

こもっています。そして幾多もの工程と人の手を経て完成品へと近づいていきます。正に芸術品と

いうにふさわしい刀の持つ味わいです。刀が武士の魂だと言われるのも頷ける事です。

                                          2001年10月28日掲載

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