おおよそ鳥らしからぬこの生き物は古くから人間社会と深く関わり合って生きてきた。

古くは神の使いの鳥としてあがめられた事もあるし、死を招く鳥として忌み嫌われた事もある。

いずれも、この鳥の特徴を良く表している。神の使いとして崇められたのは、この鳥が他の鳥にくらべて非常に賢い

鳥であることを表しているし、死を招く鳥として忌み嫌われたのは、外見的なものと、この鳥の食性と深く関連して

いるように思われる。

今、都会では増え続けるこの鳥に大変手を焼いている。それだけ人間社会と密接に生き続けてきた鳥と言えるのでは

ないだろうか。

  私の観察によるとカラス達にも全く異なった生き方をしている二つのタイプがあるように思われる。

数羽で民家近くに住み移動することなく生活しているもの。一方、集団で常に場所を変えて生活をしているものがいる。

民家近くに住みついているカラス達は民家近くの餌を細々と食いつないで生きているに違いないが、それにしても

何処にそんな餌があるのだろう。最近は生ゴミもネットで囲んだゴミ置き場に置くようにしているので、私の近所では

少なくとも常時餌にありつけるような状態にはない。

  集団行動をしているカラス達はいつも何処からともなくやってきて、近くの山で大騒ぎをしている。

そして柿などの収穫期になると一挙に集団で舞い降りて来てたちまちの内に食い荒らして去っていく。

夏の朝、上空を見上げるとカラス達が三々五々西の方から東に向けて飛んでいく。いったい東の方に何がある

のだろうか。この習慣的な行動は変わることなく毎年続いている。

  朝早くからカラスの大きな鳴き声で目を覚ますことがある。窓を開けてみると向かいの家のテレビのアンテナを

止まり木にして鳴いている。いったい何処に住んでいてどんな生活をしているのか、こんなに間近にいながら

彼らの習性は全く分からない。

  一度ならず二度三度と集団でやってくるカラス達に収穫間近な柿をやられたことがある。一度脅かしたくらいでは

容易に立ち去ろうとはしない。柿木とほど遠くない山にいて、低空飛行で偵察にやってくる。その姿を下から見上げると

あたかも横目でちらりと盗み見をするような仕草に見える。人影が見えなくなると、たちまちの内に集団で舞い降りてきて

柿の実をつつき始める。その猛烈な食欲はまたたくまに一本の柿木を丸裸にしてしまう。又決して熟していない柿や

渋柿は食べようとはしない。いったいどうやって見分けているのだろうか。

  地元に居着いているカラス達は枇杷を狙う。枇杷はすべて袋を掛けているので容易に食べ頃かどうか分からない。

それにも関わらず確実に食べ頃のものを狙っている。カラス達には熟期を知る本能のようなものがあるに違いない。

  集団行動のカラス達が毎年同じ場所に同じ時期にやってくると言うことは、彼らがちゃんとすべてを記憶していると

いう証拠だ。ある年には、今日収穫しようと思っていた正にその日に集団でやってきてすべてを食べ尽くされたことがある。

腹立たしさとともに、その時期をきちんと知っていたことに大変驚いた記憶がある。

それ以来私は様々な防除を試みた。ビニールで作った偽物のカラスをぶら下げたこともあるし、鳥脅しのバルーンを

つり下げた事もある。光り物を嫌うというので光り物をあれこれと試してみた事もある。しかしどれ一つとして

有効であったものはなかった。

  そうして行き着いたのがここで紹介するネットである。写真のネットは編み目の比較的小さいものでかなり丈夫に

出来ている。これをかぶせておくと全体を覆わなくても鴉達は怖がってやってこない。今年も近くの山にやってきて上空を

飛んでは様子をうかがっていたが、決して舞い降りては来ない。大胆な行動をとる反面、大変用心深い鳥なのだ。

こんな姿を見ているだけでも、この鳥の知能の高さがうかがえる。しかし、彼らは常に学習をしているわけで、

このネットもどこまで有効であるのか見当はつかない。どこまでいっても人間と鴉の知恵比べは続くような気がする。


2000年初夏

写真が小さくて少しわかりにくいでしょうが先端部まで実が付いています。

しかしネットを張っているだけでカラスは警戒して近寄りません。

2000年6月撮影

ネットの効果は抜群です。たわわに実ったビワを早くからカラスが狙っていました。集団でやってくる

カラス、地元に居着いているカラス、いずれもビワを狙っています。今年は早めにネットを張りました。

集団で来ていたカラス達はとうとうあきらめて、どこかへ飛んでいきました。地元のカラスも近くまで

来るのですが、怖くて近づけません。

ネットは上の方の方までは届かず、つつこうと思えば何でもないことなのですが、賢い鳥であるが故に

怖くて近づけないのです。その代わりヒヨは毎日来ています。こちらはネットの下にまで潜り込んで

つついています。なまじ知恵あるものは知恵あるが故に、おいしいものへもありつけないのです。

                                          2000年6月11日


ネットはホームセンターのような所に売っています。丁度魚をすくうような編み方のより糸で作ったネットです。

鴉にお困りの方は是非試してみて下さい。


カラスの事ならお任せという一冊の本を紹介

「カラスバトル」  矢崎葉子著  株式会社太田出版


 先日の朝日新聞に、こんな記事が掲載されていました。袋に詰めた中身が人間には見えてもカラスには

見えないという黄色いポリエチレンのゴミ袋が開発されたそうです。カラスは中身を確認してつつくという

性質があるそうで、カラスには中身が見えないような特殊な加工がしてあるそうです。

 都市部に限らずカラスにゴミ袋をつつかれて困るという声を良く耳にします。都会に集まるカラスは大量に

出てくる生ゴミを餌にしています。従って、この袋が本格的に使用されるようになれば、餌を口にすることが

出来なくなり、カラスは次第に少なくなるのではないでしょうか。

                                                 2004年9月22日掲載

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