映画「カラオケ」

 誰にでも青春の思い出はあるものです。それは淡い初恋であったり、辛い別れであったりと人様々です。しかし、苦い

思い出も、辛い別れも、いつしか忘れてしまっています。そして何年か過ぎた後、その時の相手に久々に出会ったりすると、

急に、その人との思い出が蘇ってくるものです。そんな誰にでもある経験を映画にしたのが「カラオケ」です。題名だけから

想像すると、コメディ映画のような気がしたのですが、そうではありませんでした。

 この映画は私より一回りくらい若い世代が主人公のお話です。どこにでもあるような小さな地方都市での出来事でした。

この町の出身者、林洋平(佐野史郎)が芸能界の有名人となり、若い婚約者を連れて里帰りするところから始まります。

写真館を営む児玉泉(段田安則)、中学校の教師の小金井亜子(美保純)と同僚の大場大介(野口五郎)、開業医の

相田富男(島崎俊郎)、離婚し里帰りしている薬屋の娘 水谷淳子(黒田福美)、同じ町の先輩と結婚した平凡な主婦で

ある矢崎芳江(柴田理恵)など、みんな中学生時代の同級生でした。林の里帰りがきっかけで、昔、仲の良かった者だけ

が集まって同窓会を開きました。同窓会のお開きの後はカラオケに直行です。小さなカラオケボックスの中でこのドラマ

は展開されます。お互いに好きな相手でありながら、うち明けられなかった思いや、忘れかけていた過去の思い出が

一挙に蘇って来ます。

 懐かしい青春時代の思い出の歌を歌いながら時は流れていきます。とうとう夜が明けてしまいました。それぞれが現実

に戻る時が来たのです。林、児玉、小金井、大場、相田、水谷、矢崎など今は中年となった男女が夜明け前の町をさま

ようように歩き始めます。そして三々五々分かれていきます。残された、林洋平、児玉泉、水谷淳子の三人の間には

水谷淳子を巡っての秘密があったのです。この秘密をお互いに明かすことなく、林は町を後にします。そして帰る途中、

交通事故で婚約者と共に亡くなってしまいます。

 誰にでもありそうな日常を同級生同士や家族、学校、子供達の成長を絡ませながら、淡々と描かれた映画でした。

俳優佐野史郎が作った映画、第一作です。佳作と言える出来ではないでしょうか。佐野史郎自らもメガホンを握りながら、

主人公の一人を演じています。出演者全てが個性派の俳優ばかりです。これら芸達者な俳優達が、この映画をいっそう

手堅いものとしています。何かしらほのぼのとしたものを感じさせてくれる映画でした。撮影手法や物語の運び方には

大林宣彦に繋がるようなものを感じました。これは私の多少の偏見もあるかも知れませんが。


   
児玉泉(写真館の主人)              段田安則
水谷淳子(離婚して里帰りしている女性)    黒田福美
小金井亜子(中学校の先生)           美保純
大場大介(同じ中学校の先生)           野口五郎
相田富生(町の開業医)               島崎俊郎
矢崎芳江(平凡な主婦)              柴田理恵
小金井哲也(亜子の夫)              ベンガル
林洋平(里帰りした芸能人)            佐野史郎

                                                2003年1月18日掲載

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