天上界は変化のない退屈なところでした。限りない年月と、満ち足りた食べ物、かぐわしい香りと絶世の美女達、

足らぬもののない世界でした。神達はこの変化のない生活に飽き飽きしていました。

何か面白いものはないだろうか、色々考えた末に思いついたのは、見下ろす地上界に、自分たちに姿形を似せた

ものを作り、それらの者達に自分たちが体験し得ないような事をやらせて見ようという思いつきでした。

それは面白い、どの神達も大いに乗り気でした。是非やろうということになり、早速、準備に取りかかりました。

混沌として形のない地上に陸を作り、海を作り、川を作り、森を作りました。

そうして、自分たちに似せた幾組かの男と女を作ったのです。

さて彼らは裸のままで地上に放り出されてどうするのだろうか。神達は期待に胸を膨らませていました。

それは期待を裏切るどころか、思いもしないような展開を見せ始めたのです。それらは、すべてがこの地上で繰り

返されてきた幾多の人間ドラマです。脚本のないドラマほど面白いものはありません。

予測がつかないからこそ面白いのです。はらはらドキドキの連続です。人間達は地上におかれて幾千年、相変わらず

変わる事なき愚かなる営みを続けています。これが又、神達にとってはたまらなく楽しいのです。時には愚かさ故に

抱きしめたくなるほどかわいく思えるときもあるのです。なんでこんなことをと思うような、とんでもないことをしでかし

たりする時には、いかに自分たちの楽しみとは言え、後ろ暗さを感じることもあるのです。でも、一度味わった楽しみを

元に戻すことはとうてい出来ません。これからの展開がますます楽しみなのです。

かくて地上界は人間どもがしでかした様々な災いが渦巻くようになりました。人間を地上に作った頃とは随分環境も

変わってしまいました。

近頃では、自分たちのすぐ側まで汚染や危害が及ぶようにもなりました。ミサイルや人工衛星と言った物騒なもの

まで飛んで来るようになりました。

もちろん、近くに来たからといって、人間どもに自分たちの姿は見えはしないのですが、ひやっとすることも二度や

三度ではないのです。何よりも困るのは自分たちの領域だと思っていた遺伝子操作や原子力といったものにまで

手を広げ始めた事です。予測のつかないことが加速度的に増え続けています。もう少し様子を見ようと思っていま

すが、あまり目に余るようなら、このゲームは中止も考えなくてはならないと思っています。

どのような幕引きが良いのか、神々の間では、そんな話さえ出るようになりました。思いの外早い時期に、実行に

移さなければならないかも知れません。

かつて恐竜たちを繁栄させた時代もそうでした。彼らも巨大化した体をもてあますようになり、中でもティラノザウルス

のように肉食で智慧多きもの達が、飢えてもいないのに他の弱きもの達をやたら殺戮するようになってしまいました。

地上には血なまぐさい殺戮が繰り返され目を覆うばかりでした。

人間どもも可愛らしい顔かたちをしているのですが、やることはティラノザウルスと少しも変わりません。

いや、はるかにえげつないことをやるようです。必要もないのに人を殺すのは肉食恐竜たちと同じです。残酷さには

恐竜の時に少しは見慣れていましたが、最早我慢できなくなってしまいました。広島や長崎の惨状はあまりにも目に

余ります。ナチスのユダヤ人に対するひどい仕打ちも強い衝撃を受けました。

恐竜たちを殲滅するときは、巨大な隕石を投下して全てを消滅させてしまいました。今度はどんな手段を取ろうかと

考えています。再び隕石にするか、このままにしておいて、自らを破滅させてしまうのをじっくりと待つとしようか・・・・。

                                                    2000年8月5日掲載

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