会社周辺の景色

春うららかな4月会社の前に広がる遊水池の土手にはカラシナの黄色い花が咲いていました。

 今、定年を直前に控えて毎日のように会社周辺を歩いています。こうして歩いてみますと、今まで気が

付かなかった発見がたくさんありました。

 コースを追って説明します。会社の正門を出てすぐ南に向かいます。会社のフェンス沿いに歩いていき

ます。やがて、橋にさしかかります。橋の下には松江地区から流れてくる川が流れています。流れている

とは言いながら淀んだ流れで、会社の東側にある遊水池に合流しています。この流れが遊水池に合流

するところには橋が架かっています。

   

殺伐とした工場ですが、こうして遠くから眺めますと、それはそれで絵になるような景色です。

 この橋を渡るとすぐに左に曲がります。右側の茂みの中には、大きな石が折り重なった小さな島があり

ます。島とは言いながら今は堤防の中の石の集合体に過ぎません。堤防の中に取り込まれてしまい

周辺の海水がなくなったからです。生姫島(うめじま)と言います。私達がこの地へ赴任した頃には大きな

松の木が生えていました。

細く長い呼松水路の水面に春の日射しがきらきらと輝いていました。(水門のほとりにて)

 そして、その先には遊水池と呼松水路をつなぐ水門があります。水門は二箇所並んでいます。水門は、

通常、引き潮時に開けられ遊水池にたまった水を海に流します。遊水池の水は決してきれいな水では

ありません。途中で流れ込んだ水がすべてここに集まるからです。水も濁っていますが、ゴミもたくさん

浮いています。水門には大きなポンプが設置されています。自然排水だけでは追いつかない大雨の時

にはポンプで排水します。ちなみに、この遊水池には上流の各所からの多くの水路が合流しています。

 遊水池には淡水と海水の両方の魚が住んでいます。ボラや鯉等の他、亀もいます。ハエなどもいる

ようですが、あまり姿を見かけません。会社の排水口付近にはたくさんの魚が群れています。排水が

温かいからか、特に冬場に多いようです。

 また、遊水池は水鳥たちの餌場になっています。ウミウやカモメ、シラサギやアオサギがやってきます。

遊水池の端に立っている送電線の鉄塔にはウミウが羽根を休めていました。一方、呼松水路の方でも

ウミウが盛んに餌をあさっていました。

 水門を過ぎると大きなカーブにさしかかります。この辺から水路の向こう側に呼松地区が見えてきます。

山の斜面には幼稚園があり、山裾には桜が咲いていました。遠くから眺めていてもとてもきれいです。

私達が若かった頃、会社の帰りに花見をしたことがありました。のんびりとしていた時代のことです。

この桜は、春は花、秋は紅葉に変わります。

    

呼松水路をはさんで向かいには呼松の集落が広がる。

水路の両脇には所狭しと繋がれた釣り船が並ぶ。

 呼松地区は漁師町です。呼松水路の両岸にはたくさんの釣り船が繋がれています。とは言いながら、

専業でやっている人はほとんどいないようです。多くの釣り船はレジャー用のものです。水路向かいの

呼松側に繋がれた船は地元の人達のものだそうですが、手前の方は地元外の人が持ってきて繋いで

いるようです。今では地元の船より多いようにも見えます。休日ともなると、道のほとりや狭い土手の下

に車を置いて釣りに出かけています。

 呼松地区も他の漁師町と同じように、狭い斜面にたくさんの家が建ち並んでいます。斜面に建てられた

家々を結ぶ狭い通路は漁師町特有のものです。

 遊水池を挟んで向かい側には日本合成の工場があります。こうして遊水池の端から見ますと南北に

細長い工場です。水路横の堤防上をどんどん歩いていくと、堤防の尽きる手前に市道に下りる道が

あります。ここから関東電化の方に向かって坂道を下り市道に出ます。市道を松江地区に向かって

歩きますと、水路を挟んで左側には大きな壁のようにも見える日本合成の立体倉庫があります。

 私が歩いているこの季節、立体倉庫裏側のキョウチクトウの茂みの中ではアオサギが子育てをして

いました。いつのまにかアオサギ達のコロニーになっているようです。

アオサギ達は子育ての真っ最中だった。

 市道を挟んで左には日本合成、右側には関東電化があります。関東電化の隣は三国製薬です。

そして、その奥の広い敷地には三菱化学の関連工場があります。左側にある日本合成の敷地の

西の端近くに信号があります。信号を左に曲がると三菱化学の私道になります。

 この信号をまっすぐに進みます。信号を渡ってすぐのところに三菱化学の松江変電所があります。

この変電所から日本合成に電気が送られて来ています。そして、その南隣には日本合成の加工技術

開発センターがあります。主力製品の一つであるソアノールの用途開発やお客さんから依頼のあった

試作品のテストなどを行っています。

 そして、次の信号を左に曲がると三菱化学の正門に至る私道になります。私道の左側には三菱化学

エンジニアリングの工場や事務所、そして関連会社の事務所が並んでいます。また、道路を挟んで右手

には三菱化学の広いグランドがあります。夜間照明のある立派なグランドです。しばらく歩きますと、

三菱化学エンジニアリング関連の建物の南の端に着きます。ここを左に曲がると日本合成の駐車場や

工場になります。

 この道路の横断歩道を渡りますと道は右側に大きくカーブします。左手には三菱化学の駐車場、右手

には三菱化学の大きな建物があります。体育館でしょうか、多目的な集会場でしょうか。立派な建物です。

グランドやこの建物は従業員の厚生施設のようです。周囲には木が植えられ、松江地区との緩衝緑地帯

を兼ねているようです。これらの木々の中には桜の木もあって満開でした。また、左手にある駐車場と

歩道の境にはアカメモチが植えられています。真っ赤な芽吹きがとてもきれいでした。

 やがて、この歩道の端に出ます。ここは松江地区から流れ込んでくる水路の上で橋が架かっています。

橋を渡って左に曲がると潮止めの堤防の上を歩きます。堤防の右側が海だった頃の名残の堤防です。

今は堤防の先も埋め立てられ工場敷地になっています。堤防の上に植えられたキョウチクトウ越しに

三菱化学のプラントが見え隠れしています。

 道の左側には桜の木が植えられています。見事な大木です。ソメイヨシノや実をたくさん付ける白い花の

桜等があります。以前、私はムクドリがユスラウメの種を落としているのだと思っていましたが、ユスラウメ

の種に見えたのは、これら桜の木の実だったようです。これだけたくさん大きな木があれば、いかに大群の

ムクドリとはいえ彼らの腹を満たすには十分過ぎるほどの量です。また、鳥たちが運んだと思われる桜の種

が遊水池の周辺で芽吹いていました。中には既に花を付けるほどに成長したものもありました。

 この道は右側がキョウチクトウ、左側は桜の木に覆われて緑のトンネルのようになっています。道の東側

の端に立って振り返ってみますと、水路に花びらを浮かべ水に影を落とした桜並木が一幅の絵のように

見えました。

    

太い枝からも可憐な花が開いていた。よどんだ流れだが遠目には桜を映す鏡にも見える。

    

白い花も美しい。花が終わってしまうと、それらは全て小さな実になっていた。

    

今は花のトンネルと化した堤防の上の長い道。

パイプラックの間から見える景色も絵になる眺めではないだろうか。

 ここを右手に曲がりますと歩き始めた道へと戻ります。道の端には気が付かなかったけれど、小さな花が

何ヶ所も咲いています。可憐なスミレの花です。こんな素晴らしい自然が身近にありながら、つい最近まで

気が付きませんでした。会社と家の往復だけだったからです。と言うより周辺をゆっくりと見回す心の余裕

などなかったからです。しかし、定年を直前に控えて、改めて眺めてみますと、今まで気付かなかった発見

がたくさんありました。

                                                2004年5月3日掲載

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