株についての話

 戦前、私の父は株屋(証券会社)に勤めていました。丁稚からたたき上げられて一人前の

場立ちとして働いていました。場立ちというのは証券取引所で株の売り買いをする人のこと

です。場立ちにはそれなりの勉強や能力が必要で誰でもがなれるというものではなかったよう

です。

 今日では、その颯爽とした姿を見ることは出来なくなりましたが、手を高く上げ指先で売値、

買値のサインを送っていたように記憶しています。今はコンピュータが主役の株の売買ですが、

コンピュータを操作して売り買いを行うのもやはりベテランの証券マンです。

 自分は株を持っているからと言って直接相手に売るわけにはいきません。従って、すべての

売り買いは証券会社が仲介役となって売り買いをしています。その代わり証券会社は一株に

対していくらという手数料を取っています。

 父は生前、自分がベテランの証券マンであったにも関わらず、自ら株を買うことも売ることも

しませんでした。それどころか私達息子には株には絶対に手を出すなと厳しく言っていました。

それは間近に株の売買で失敗をした人の姿を見ていたからではないかと思います。

 父が株屋に勤めていた頃は太平洋戦争以前の戦時景気に湧いた頃でした。周辺各地や

ヨーロッパ等で戦争の兆しがある度に株は激しく乱高下していたようでした。株価の変動を見る

目があった父は知人から依頼を受け株の売買をしていたようです。

 自らも売り買いをしていたのかどうか分かりませんが(私が考えるのに証券マンが自分のた

めに売り買いをすることは違反なのではないかと思う)当時としては破格のお金を手にしていた

ようです。決していちげんの客は通さないと言う京都の花街で派手に遊んでいたと話していま

した。時にはタクシーを飛ばして京都から大阪まで遊びに行ったこともあると話していました。

金持ちの道楽息子などがパトロンだったようです。

 さて昨今、株に関する話題が二つ社会を賑わしています。一つは昨年から問題となっている

西武グループの保有株の問題です。西武と言えば先代が一代で築き上げた鉄道を中心とする

一大コンチェルンです。先代は息子達に自分が残した資産を絶対に散逸することのないよう

遺訓に書き残していたそうです。そのため息子達は如何にして膨大な資産を守るか始終腐心

をしていたようです。その現れが西武グループという表向きの顔とコクドという裏の顔でした。

コクドという会社はひたすら資産隠しのために使われていたようです。一体何故こうまでして

資産を守らなければならなかったのか。資産を持っている人のみが知りうる事かも知れません。

 ともあれ、この間の事は解説が難しく「アサヒコム」の記事をそのまま引用させて貰います。


 西武鉄道による大株主保有比率の虚偽記載問題で、東京地検特捜部は22日、同社の筆頭

株主・コクドの堤義明前会長(70)から任意で初めて事情聴取した。(1)西武鉄道が、コクドが

持つ株の保有比率を過少に記載して有価証券報告書を提出したこと(2)コクドが虚偽記載の

事実の公表前に西武鉄道株を大量売却したこと――をめぐり、違法性の認識の有無や両社

役員とのやりとりについて説明を求めたとみられる。グループトップだった前会長の聴取結果

を踏まえ、特捜部は上級庁との最終協議に入る方針だ。

 特捜部は1月から、西武鉄道元社長やコクド前専務らグループ関係者の聴取を進め、証券

取引等監視委員会と連携して証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載、インサイダー

取引)の疑いで調べている。グループ内の指揮系統を解明し、堤前会長の刑事責任の有無を

検討するため、前会長本人からの聴取が不可欠と判断した。

 これまでの調べや関係者の話によると、コクドは40年以上、保有する西武鉄道株を元社員

らの個人名義に偽装。04年3月期末時点で約1100人の個人名義の株式を実質的に保有

していた。

 両社の一部の役員や株式担当者は、上場企業を対象に株券を電子化してペーパーレスに

する制度が数年後に実施されて株主の本人確認が必要になると、名義偽装が発覚する可能

性が高いとして03年から対策を協議。コクド前専務らは04年5月、現状や問題性を堤前会長

に報告したという。

 結局、西武鉄道は名義偽装株の分をコクド保有と是正せず、04年6月、コクドの保有比率

が実際には64.83%なのに43.16%と記載した有価証券報告書を作成し、関東財務局に

提出。この段階で、上位10株主の持ち株比率は東京証券取引所が定めた上場廃止基準に

抵触する80%を超えていた。

 その後、04年8月20日に西武鉄道の取締役会で同社監査役が名義偽装株の存在を指摘

したことを受け、同社がコクドに事実確認を依頼した直後、堤前会長はグループ各社の幹部

らに「4千万株」という目標をあげて売却を指示したとされる。

 売却は上場廃止を回避する狙いとみられ、顧問弁護士らの助言も受けて約70社に約7000

万株を売却。西武鉄道が名義偽装株の存在を公表したのは大量売却後の同年10月13日

だった。

 堤前会長は04年4月、総会屋への利益供与事件を機に西武鉄道会長を引責辞任。名義

偽装株の公表とともにグループの全役職も辞任している。 (05/02/23)


 私は以前から会社が株式を公開し社会のものになった時点から、創業者であっても私物化

してはいけないと主張してきました。また、株を公開するしないは別にして家族以外の従業員

を採用したら、会社は社会のものだとも書いてきました。経営者には雇用者としての責任や

会社経営者としての責任が生まれてくるのです。

 ところが世の中には何故か公私を混同している人が多すぎるように思うのです。株式会社

であれ有限会社であれ自分の家庭で使った費用まで会社の経費で落としている人が少なく

ありません。私の住んでいる児島地区は繊維産業の町ですが、個人経営に近いような会社が

たくさんあります。これら小さな会社の経営者は私達サラリーマンにはとても買うことの出来ない

ような高級車に乗っています。それでいて、所得税はゼロに近いと言うような人が少なくありま

せん。生活費を含めすべて経費として申告をしているために収入が限りなくゼロに近いからです。

 源泉徴収として頭から税金を引かれているサラリーマンには真似の出来ないことです。また、

市の保育料ですら所得税に応じて支払うシステムですから、表向きの所得がゼロの人は保育

料もわずかな金額で済むのです。こんな事がひいては公私混同の考えを持たせ今回のような

事件に繋がっていくのではないでしょうか。

 さて、公人としてもまた政界にも少なからぬ影響力を持ってきた堤氏ですが、こんな事で良い

のでしょうか。

 もう一つの事件はライブドアとフジテレビ間の日本放送株の争奪を巡る壮絶な戦いです。

日本放送が新株を発行するという奥の手を考え出したため争奪戦は法廷の場に持ち込まれ

ました。どうやらこの争いは長期化しそうな状態です。

 ライブドアの堀江社長の構想が真意だとすれば時代の先取りだと言うことになるのではない

でしょうか。今やコンピュータを媒体としたネットと変化しつつある放送はいつの日か一緒に

なる運命にあります。堀江社長が語っているように双方向という機能がテレビにも付加されま

した。市販のパソコンにもテレビチューナを内蔵したものが当たり前になってきました。両者は

ハードの面からもソフトの面からも限りなく近づいています。その内にテレビ、パソコンという

区別がなくなる時代が来るのではないでしょうか。

 ここは両者とも、もっと大人になって前向きな話し合いをすべきではないでしょうか。確かに

堀江社長が仕掛けた争奪戦でしたがフジテレビも将来を見据えて堀江社長の話に耳を傾ける

べきではないでしょうか。

 ただ、懸念されるのは堀江社長のバックで動いている莫大な資金です。この金はアメリカの

投資会社が用立てたものです。マスコミに対する外資の介入を許さないのどと言うならば、

それなりの法的措置が必要だと思います。

 この記事を書いた後、フジテレビは日本放送の株を買い増しするために公開買い付けを行

いました。その結果35パーセントを超える株の取得率になりました。ライブドアとフジテレビが

がっぷりと四つに組んだ形になりました。ますます、両者の争いは混沌としてきました。

 一方、両者の持ち株を合わせると85パーセントを超えてしまいます。こうなると株式は上場

できなくなります。従って、日本放送の株の取引は市場から消えてしまいます。両者の争いが

一般投資家を無視する形になってしまいました。

                                      2005年3月10日掲載

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