JR西日本事故に思う

 約一ヶ月前の4月25日、鉄道史上まれにみる大惨事がありました。JR西日本福知山線の電

車の脱線転覆事故でした。多くの人が亡くなられ、今もなお怪我で苦しんでおられます。亡くなら

れた多くの犠牲者の皆さんへ心からのご冥福をお祈りいたします。また、今もなお怪我で苦しん

でおられる方や最愛の人を亡くされたご遺族の方々に対し心からお見舞い申し上げます。再び

このような悲惨な事故を起こさないために、この事故に関しては多くのことが語られ反省が迫ら

れています。

 先日も地元のRSK放送の「ちびっ子バンザイ」という番組の中で地元の小学生にインタビュー

していました。「最近の出来事の中で印象に残った出来事は何ですか」というアナウンサーの質

問に対し、五人中四人までが今回の鉄道事故だと答えていました。更にアナウンサーが「この

事故に関して何を感じましたか」という質問に対し、一人の小学生は「管理者のあり方に問題が

あったのではないか」と話していました。恐らく彼の家庭では、この事故が話題になりお父さんや

お母さんが事故のことに関して話していたのだと思います。たとえ両親の受け売りだとしても、そ

の子なりに「人の管理」に問題があったと感じていたのではないでしょうか。

 どんな事故でも一つの原因で起きるような事はまずありません。大抵の場合、二つ以上の原

因が運悪く重なった時に起きています。もし、あの路線にATS(自動列車停止装置)が設置され

ていたら、こんな事故は起きなかったはずなのにと多くの方が指摘されています。しかし、設置

するか否かを決めるのは人間です。また、どんな優れた安全装置を設置しても、使いこなさなけ

れば何の役にも立ちません。このように、すべての事は人間の判断にゆだねられているのです。

 JR西日本は他の私鉄との競争にうち勝つために、秒を争うような過密なダイヤルを組んでい

たようです。JR西日本は国鉄が分割民営化されたときから他の私鉄との苛烈な競争を運命づ

けられていました。限られた路線の中で如何に売り上げを伸ばし利益を上げるか、これは至上

命令だったはずです。そのためには極限まで人を減らし、直接利益に繋がらないような投資は

行わず、過密ダイヤルの中で他社との過当競争にうち勝つ、この路線を突っ走ってきました。

これは鉄道のみならず、日本のいや世界の資本主義経済下のすべての会社が宿命づけられ

た問題なのです。

 しかし、いやしくも人の命を運ぶ会社であってみれば安全という問題は絶対に守らなければな

らなかったはずです。事故が発生した後で「実はこういう事情で出来なかったのです」では済ま

ないのです。安全第一こそが、すべての企業に課せられた使命なのです。これは人を輸送する

事業だけのことではありません。

 また、安全こそは人間でなければ考えることの出来ないことなのです。電車を動かしているの

も人間です。機械や装置を運転しているのも人間です。航空機を操縦したり整備したりしている

のも人間です。その輸送設備や機械、装置を維持管理しているのもまた人間なのです。そして、

維持管理費や安全のための投資を決めるのも人間です。

 亡くなった運転手は再三トラブルを起こし、その都度、何度も再教育を受けていたようです。彼

自身、運転手としての適正に欠けるものがあったのかも知れません。恐らく前の駅のホームで

オーバーランしたとき、最初の時とは異なった思いが去来したに違いありません。何とかこの場

を繕い、汚名を返上したい。そんな思いが今まで以上に強く働き、スピードを上げていたのでは

ないでしょうか。はっと我に返り気が付いたときには制御不能なスピードになっていたのではない

でしょうか。

 人間は大変デリケートな動物です。感情という他の動物にはないものを持っているだけに犬や

猫を叱るようなやり方は通用しないはずです。再教育の際には人間性を否定するような発言も

あったのではないでしょうか。恐らく上司にそれを正しても答える人はいないでしょう。もっと、再

教育には再教育らしい相手の性格や考え方を考慮した上でのやり方があったはずです。ここに、

国鉄時代を経て今日に至るJRの本質的な問題があるような気がしてなりません。

 JRの大事故の陰に隠れて大きな問題になってはいませんが、日本航空の相次ぐ不祥事に関

しても同じような問題があるように思えます。JRも日本航空も会社の体質を改めると言っていま

すが、そう簡単に改まるとはとても考えられません。根は相当深いのではないでしょうか。

 そのためにはリーダーシップを取る立場にある経営者と管理職全員が痛恨の思いを持って

今回の事故についての反省をする必要があります。そして、その思いを心から部下に語ること

から再出発が始まるのではないでしょうか。上辺だけの反省や時が解決するなどと思っていた

ら、また同じ事を繰り返すことになりかねません。全てのことは会社のトップに責任があることを

自覚して貰いたいと思います。良くするも悪くするも人間自身であることをATSを設置する前に

考えるべきではないでしょうか。

                                  2005年6月2日掲載

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