田舎暮らし番組に一言

 最近のテレビ番組では「田舎暮らし」をテーマにしたものが人気番組になっている。描かれて

いるのは楽しい事ばかりで、その裏にある苦労話などはすべてカットされている。先日、「田舎

暮らし」をしていた人が都会に引き返したという話を聞いた。ご主人が病気になられ通院が大

変だからとの事だった。

 「田舎暮らし」の番組では、都会住まいの人達があこがれるような事がたくさん描かれている。

しかし、都会暮らしに慣れた人が突然田舎に引っ越して農作業のようなきつい仕事が出来ると

は思えない。それは私自身が長い間、サラリーマン生活をしながら、わずかばかりの畑を作っ

てみて感じていることだ。体力が衰えつつある定年後に田舎に移り住んで百姓など簡単に出来

るものではない。中には成功した人がいるかも知れないが、多くの人は若い頃田舎に移り住ん

だ人達だ。そんな人は若さで苦労を乗り越えて来た人達だ。気力や体力があったからこそ出

来たことではないだろうか。そんな若い人達にも人には話せないような苦労があったに違いな

い。

 一口に「田舎暮らし」とは言っても、近所付き合いも簡単ではない。番組で紹介されているよ

うな心優しい人ばかりではないからだ。田舎では田畑に使う水一つにしても水利権があって、

行政や農協などが「田舎暮らし」を斡旋した場合なら別だが、誰でも勝手に使うわけにはいか

ない。

 長い間、田舎同様のこの地に住んでいて感じることだ。畑の日当たりが悪いから木を切って

くれとか、勝手に人の土地を行き来するなとか、小さなトラブルも少なくない。決して番組に出て

くるような素朴で心優しい人ばかりではない。

 「田舎暮らし」をしたい人は何よりも体力がある内に基礎を作っておくことが大切だ。田舎に

移り住むまでに果たして今の自分の気力と体力がどこまで続くか見極めておくことが必要だ。

病気になったらどうするのか。夫婦二人だけの場合、どちらかが病気で動けなくなった時や亡

くなった時どうするのか。そんな事まで考えておくことが必要だ。

 冒険にも近いような事を実行するには、あらかじめ大きな決断が必要ではないだろうか。安

易なあこがれだけで「田舎暮らし」を始めることだけは厳に慎みたい。また、テレビ番組も良い

ことだけを誇張して放送して貰いたくない。苦労話も織り込んだ真実を伝えるべきではないだろ

うか。

 NHKの朝の連続ドラマ「風のハルカ」では、脱サラをしたお父さんの「田舎暮らし」の失敗談

が描かれている。お母さんは初めから「田舎暮らし」には反対だった。結局、夫婦は離婚してし

まうが、これが案外真実に近い姿ではないだろうか。

                                      2005年11月19日掲載

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