田舎暮らし考

 もう何年も前から「田舎暮らし」についての話題を良く耳にします。現に、都会生活から「田舎

暮らし」を始めた人も多いようです。私が今の生活に見切りをつけて、どこか山間部の田舎へ

引っ越そうかと夢のような事を考え始めたのも「田舎暮らし」の話が少しずつ聞かれるようにな

った頃の事でした。また、最近では定年を迎え、あるいは定年少し前に、今の仕事に見切りを

付けて「田舎暮らし」を始めようかという人も少なくありません。

 しかし、いざ実行となると色んな制約も多く、なかなか決断がつきません。ましてや自分一人と

言うわけにはいきませんから家族の同意が必要です。そんなわけで希望は持ちつつも、すでに

「田舎暮らし」を始めている人達の本やテレビ番組などを見て希望を癒していました。

 そんな事を考えている内に定年を迎えてしまいました。既に決断の時期を過ぎていました。今

からでは遅くないとは言うものの、いざ始めるとなると自分の体力の事も考えなければいけませ

ん。色々考えた挙げ句、結局は諦める事にしました。

 実は数年前、家からほんの少し離れたところに土地を買っていました。また、わずかばかりで

すが親戚から借りている畑もありました。買った土地は裏山の続きの小高い丘です。昔は畑だ

ったところですが、作る人がいなくなって笹や雑草や雑木に覆われていました。二十数年前、こ

の土地を貸して欲しいという人があって、その人が開墾を始めました。ところが途中で怪我をし

て継続できなくなりました。結局、後を引き継いで私が畑にしていきました。200坪ほどの広さ

があります。何年もかけて少しずつ開墾し、そこに果樹を植えました。

(開墾を始めた頃は家内のおじいさん方の土地でした)

 ここは俗に言う「里山」のようなところです。小高い丘になったところですから谷を挟んで向か

い側の切り通しの間から、ほんの少しですが海が見えるような見晴らしの良いところです。すぐ

横には御大師さまの小さなお堂があり、御大師様は近所の人達の心のよりどころになっていま

す。

 今、畑ではビワの実が色付き初め、梅の実やアンズの実が大きくなっています。また、花が終

わったナシやリンゴやスモモ等も少しずつ大きくなり始めています。やっと袋掛が終わったとこ

ろです。今はブドウやキウイやカキの花が咲いています。それを追いかけるようにクリの蕾が日

々大きくなっています。

 スモモ、アンズ、ネクタリン、モモ、ナシ、リンゴなど色んな果樹がありますから、花の季節はま

るで小さな桃源郷のような感じがします。私自身はどちらかというと花の季節よりは、青々と葉

が茂った今の季節の方が好きです。長く晴天が続いた後、一雨降ると白く乾いていた土にも黒

さが戻り、何よりも木々が生き生きしてきます。また、雨の後は小さかった実が目に見えて大き

くなります。こんな時、自然の力のすごさを感じます。

 鍬や鎌を握っていると背中の方から鶯や時鳥(ほととぎす)の鳴き声が聞こえてきます。まさに

「里山の自然」そのものです。今は柑橘類の蕾が開き甘い香りが周辺を満たしています。この

花もほぼ終わり花の後には小さな実がいっぱい付いています。ここは海が近く日当たりが良い

からでしょうか。柑橘類の成長が非常に良いようです。花の盛りには、蜜を求めて揚羽蝶やカ

ナブンが飛んできます。柑橘類が一斉に開花すると「蜜柑の花咲く丘」のような景色になります。

 これからはビワの収穫が始まり、やがて梅やアンズやスモモも収穫できます。柿やクリの花も

後を追うように小さな実を付けることでしょう。今年の梅雨はどんな梅雨なのでしょうか。その季

節にはその季節の巡りがないと自然のものは枯れてしまいます。従って、いやな梅雨でも来て

貰わないと困ります。

 走り梅雨の頃にスモモが色付き始めます。しかし、ここ数年、雨や病気で満足なスモモが出来

ません。梅雨が終わる頃にはモモの収穫が始まります。

 こうして梅雨の季節が過ぎると長い夏を迎えます。山の畑は乾燥が激しいですから散水が日

課になります。やがて、九月に入ると小さかった柑橘類や柿やクリやキウイなども目に見えて大

きくなります。秋真っ盛りになると目立たなかった柑橘類が一斉に色付き始めます。こんなにも

実が付いていたのだろうかと驚くような瞬間です。むろんカキもクリも既に収穫が終わっていま

す。一年の最後の収穫が柑橘類となります。

 これが、私が「里山」だと思っている果樹畑の四季の様子です。そして今は、ここの生活も「田

舎暮らし」だと考えています。また、ここに手作りの小屋でも建てることが出来れば等と夢のよう

な事を考えています。

                                    2005年6月2日掲載

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