慌ただしく時は流れてゆきます。この冬、最大だという大寒波のニュースを聞きながら、

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 それにしても、今年の夏は異常とも思えるような夏でした。雨降らぬ畑は連日の猛暑の中で、

何もかもが干からびてしまうような、そんな感じすらした長く暑い夏でした。 それでも季節は

巡り来るもので、今は寒さに震えるような毎日です。

 過去3年間の夏の俳句を整理しながら思うことは、私達の生活の大きく様変わりしてしまった

事です。季語の多くが、私達の生活から遠い存在になってしまいました。しかし、季語の多くが、

私達の生活とは縁のない存在になったとは言え、季節には、その季節でしか感じることの出来

ないような事も少なくありません。このページを作成しながら、過ぎ去った夏の思い出を懐かしく

ふり返っています。自然の営みと共にある俳句は今も生き続けています。

                                     もの作り      2001年1月14日

藍染めの折り目残りし夏のれん・ 検診の何事もなく若葉風・
大槌をよぎる白帆も晩夏かな 海開きニュース流る々休息時
丹誠の桃の重さの確かなる 雲の峰背にして保津の川下り・
釣船の点にみまごう雲の峰 名城も見え隠れして夏木立・
焼きなすに晩酌の量少し増え 形良き石拾う浜夏来る・
制服の色淡くなり夏に入る 香水の匂う闇あり蛍飛ぶ・
蛍見に来いと友から電話あり 四方みな開け放ちあり若葉風
なにもかも押入まかせ夏座敷 新築の屋根見下ろして幟立つ・
蝉時雨人なき寺の昼下がり 茶摘女の伏せたる顔の白さかな・
草いきれ辻を曲がれば里の道 元気良き泣き声のして初幟・
大西日夜更けし部屋のさめやらず 背負ひたる子は夢の中遠花火・
年毎に蓮田団地と変わりゆく 薄さにも軽さにも慣れ夏布団・
白南風や沖に小さき白帆ゆく 時鳥短き夜を鳴き過ごし
メーデーも抽選付きとなりにけり 雨の後ヘチマに似たる大キュウリ・
円ドルの乱高下して梅雨晴間・ 薄雲の如く流れて天の川
頂上に天守を置いて夏木立・ 太陽の真上にありて鱚を釣る・
雲の峰ビルの谷間の影深く・ 人の後追ふても蕨手に余り・
すれ違う白きうなじの夏帽子・ 鯉幟竿軋ませて泳ぎおり
扇風機羽音だけの留守居かな・ 初孫のやっと眠りし鯉幟・
カンナ咲くにぎわひ戻り登校日・ 風のなき時の貧しく鯉幟
由加よりの風連れてきし夏の蝶・ 柏餅電子レンジに甦る
鯉幟並び泳げる谷の空 五分咲きの花の上なる宵の月・
ペチュニアの色鮮やかに走り梅雨・ 春眠の遠くに聞きし霧笛かな・
睡蓮の池を育てて宮静か 光り落つ雨の雫や柿落ち葉
干拓のどこも眩しく麦の秋 山並みの靄に薄るゝ若葉風
山門に老いたる犬と蝉時雨・ ハイカーも朝霧の中尾瀬をゆく
法師蝉子等見下ろせる高さあり・ 渓谷の宿まだ明けず時鳥
大山の山並み遠く風涼し・ 木道の靄の晴れゆく水芭蕉
増水の跡を残して合歓の花・ 菊根分け済みし安堵の雨を待つ
渋滞の窓少し開け山桜 爽やかな香の夏帽の好ましく

灯に群れし羽蟻の命散らばれり バス停でほっと息つく酷暑かな・
山梔子(くちなし)の雨後の夕べのよく匂ひ あれこれと探し歩きぬ苗木市
野仏の涼しくおわす木立かな 重たげに雨滴こぼせる牡丹かな
一晩中一匹の蚊に悩まさる いかなごの釘煮勧めてくれし人
悠久の流れ果てなく天の川 帰れぬと娘よりの電話目刺焼く
亡き友の思いで新た走馬燈(藤井君におくる句) 一山を背にして跳ねる鯉幟
歓声の夜空に消ゆる揚花火 言うまいと念じゐて出る暑さかな
雨後の庭夏草奢ることにのみ すれ違う今年はやりの浴衣柄
夕凪やうきの動かぬ竿重し・ 朝凪や人待つ浜の波静か・
幹を背に写生する子や夏木立・ 晩酌の一つで足りぬ缶ビール・
場所とりを終へて花火の時を待つ すぐこはれ買ったばかりの捕虫網
帰省子に客間を当ててをりにけり 妻送り駅より返す花の雨・
夜の更けてふとん引き出す涼しけり 野遊びの疲れし寝顔腕の中・
新刊の活字の匂ふ秋涼し つくし持つ幼子の手のふっくらと
生ビール一気に星も飲み乾しぬ 散歩道遠回りして日永し
終電の遠ざかり行く五月闇 風通し良き部屋となり夏隣
魚島や今は昔の語り草・ 里の家小さく見えて柿の花
風邪ぎみの旅の支度や梅雨に入る 雨降らぬまに済ませねば袋かけ
忘れゐし胡瓜糸瓜(ヘチマ)の如くなり 道ゆずり笑顔の戻り若葉風・
円安も一休みして梅雨晴間・ 桜貝見つけし浜を一人ゆく
サッカーに一喜一憂梅雨晴間・ 敷きわらを届けてありし麦の秋
梅漬ける壺を探して陶器市 合歓の花目覚めては居ず出勤す
五月晴草食む牛の点々と・ そんな齢半夏生を見てあかず
すぐ伸びる草に埋もれて草苺・ 梅雨晴れの空広々と星あまた・
夕膳にこぼれてをりし羽蟻かな 涼風の尽きることなき渓谷路
夕日背に仏と見えもす雲の峰・ 山菜を売る峠茶屋雲の峰
刈り込みを終へてすがしき汗を拭く・ 歓声の保津川下り五月雨るる
夕立や土の匂いを置きゆきぬ 落人の里も菖蒲の名所なる・
弾みゐるテニスの声や梅雨晴間・ 待合す場所噴水の広場とす
梅雨晴や旅のプランの地図たどり 盛鉢もガラス製なる夏料理・

奥宮の磴の空より蝉時雨 人去りて色失わず夕牡丹・
野球早や終末に入る残暑かな 玉葱の粗方掘りし梅雨晴間・
貸しボート浜に引き上げ夏終わる・ 大橋をシルエットにして雲の峰・
電柱と云う安らぎに法師蝉 白南風や沖に白帆の点々と・
北極熊氷柱を離さざる暑さ 岬宮の松吹き上ぐる青嵐・
干拓の荒地の風の草いきれ・ 浜駆ける親子揃ひの夏帽子・
通勤の心なごませ花菖蒲・ パソコンのキーを叩ひて梅雨籠・
あめんぼうかかわりもなく選挙カー 掃除して降り来し山の盆の月・
白壁の街を日傘のあふれをり 魚信なき竿の並べる土用凪
下津井節流し歓迎五月晴 雷の音して木々のざわめき来・
踏まえたる水面くぼませ水馬(あめんぼう) 食いつきし魚形どる夜光虫
襖皆はずして広く夏座敷・ 喜雨と云うほどにはあらずよべの雨
銀蘭の根元明るき山の道・ 打水をやめて雨待つ夕べかな・
花菖蒲美女の名前をほしいまま・ 蝉時雨高層ビルの谷間より・
水やりも日課となりぬ夏に入る・ 開きては閉じている音秋扇
卯の花の白を気負わず谷の道・ 干拓の実りの近き雲の峰
アカシアの花散り敷きて雨上がる・ 若き友あっけなく逝き桐落下(亡き藤井君に送る歌)
懸籐のゆけども尽きぬ峡の道・ 田植機の動きそめたる峡の村・
心地よき大漁疲れ夏に入る・ 帰省子を駅に見送る走り梅雨
鱚釣し浜今はなく砂塵舞ふ・ 帰省子の職の決まりし風薫る

諸鳥につつかれおりし枇杷をもぐ・ 南北の和解の一歩梅雨晴るる・
ピクリともせぬ竿ながめ土用凪・ 積み置きし写真の整理秋暑し
公園の夜景の中の恋ボート・ 画帳には妻手習の夏木立
掃き出すもなほ湧き出ずる羽蟻かな・ 繰返し読む子の便り無視の夜
水琴の音の聞ゆる夏座敷・ 赤黄色松葉ぼたんの秋暑し
のど自慢聞きつ留守の鱚を焼く・ とまともぐ今日の暑さを予感して
収穫の喜び今日も胡瓜もぐ・ 堤防に網干す蜑や秋暑し
昼寝より目覚めし部屋の広さかな・ 尾根走るトライアスロン秋暑し
慰霊碑の祈りの長き盆の月・ 古城址の石垣降り来夏の蝶・
潮浴びはすぐ窓の下浜の宿・ 帰りには日傘となりぬ梅雨の傘
木樹の音天守址なる青嵐 ここに又巣跡見つけし麦の秋
沖よりの潮引く音や夏の月・ 吊り橋のゆらりと揺れし藤の花
打水の一筋残るホース跡・ 滑床の空暮れ残り夏近し
打水の下駄軽やかに倉の街・ 魚島といふ浜の市賑へる
最寄駅までついて来し夏の月・ 新緑や猿のぞき来る山の宿
艶競ふ美女にも似たり花菖蒲・ 万緑や穂高にかかる雲の傘
世の乱れ知るや知らずやかたつむり・ 焼岳の岩肌赤く新樹雨
終電の吾娘を迎へに五月闇・ 花時計人待ち顔の夏帽子
待ちきれず子は夢の中蛍狩・ 老鶯の鳴ける尾根道県境
蛍狩子は待ちきれず眠りをり(先生の参考句) 老鶯の声の間近き無人駅
カメラ手に下津井の町五月来る・ 街明り向かひは四国五月闇
子ツバメの頭に産毛二三本・ 山寺の秘仏を拝す大暑かな
風吹けば風に流されみずすまし・ .ふる里の嶺になつかしき盆の月  先生参考句
雨傘も日傘となりぬ菖蒲園・ 山路ゆく暮れ遅き嶺の盆の月
制服の折り目すがしき夏に入る・ 点ほどに見えし大山青嵐

夕暮の名残りとどめて白木槿 故郷の匂いなつかし夏布団
名城も眼下に置きて雲の峰 滑床の一句詠みたき若葉風
でで虫や目指す札所はまだ遠く 時鳥傘をかぶりしよべの月
晩涼の話はずめる夕餉かな 薔薇咲きし庭より朝の始りぬ
広島忌霊安かれと流灯会 旅先へ梅雨前線追ふて来し
秘話伝ふ歌碑の空なる盆の月 旅鞄脇に画帳と夏帽子
あどけなき子は腕の中夏帽子 元気良き下校挨拶夏帽子
穏やかに一と日終りぬ法師蝉 青空に煙一筋麦の秋
人村も息潜めたる大暑かな 老鶯の鳴き声近き島に釣る
一人旅西日の火照り残る宿 花びらの吹き寄せられて鯉の池
向日葵の丈の止まりし高さかな・ 新緑の風心地よき露天湯に・
もやい船軋み軋める青嵐・ 幹太き茄子苗選び求めけり・
夕焼けの瀬戸の眺めを一人占め .
夜涼みの声らし月の円かなる・ .
この道を取れば近道遠花火 .
収穫の喜びの茄子籠に盛り .
画帳には妻手習の花木槿 .
子等の列横断歩道夏帽子 .
山よりの風抜けてゆく二輪草 .
うどん打つ手に力あり麦の秋 .

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