春は足早に過ぎてゆき、夏日を思わせるような今日この頃です。桜の花は終わり、今は葉桜の季節です。

近隣の山々は緑一色となり、夏がすぐ近くまで来ていることを感じさせます。

やっと、俳句春秋の「春」編が完成しました。私の日常を十七文字の中に詠んで見ました。

「冬」編同様、つたない俳句ですが、笑ってお読み下さい。

                                     もの作り      2000年5月7日

双蝶のもつれもつれて空に消え 薫風や旅館予約の返事来る・
沈丁花通ひ慣れたる駅の道・ 晩酌に産地直送初鰹・
いぬふぐりてんとうのせて空仰ぎ・ いかなごの似合ふ盛り鉢とり出して・
梅の香のほのかに甘き由加の道・ 畑には早や人の影明易し・
庭内を行きつ戻りつ春の猫・ 時刻表開きしままの春炬燵・
水温み子等の道草そこここに・ 春の風ラジオを友に草を抜く・
釣りに行く友から電話水温む・ 寒がりのしまひかねてる春炬燵・
辻堂に佇む遍路夕霞 バス停に衿かき合す浅き春・
京の旅のれんくぐりて桜餅 真青なる空に届きて冬芽立つ
花の雨訪ふ人のなき城の跡 箸伸ばす先に箸あり闇汁会・
ぼんぼりの点りて白き桜かな・ 蜑総出網干す浜や春近し・
鼻声が少し残って春を待つ・ 庭の花挿して客待つ紙雛
訪れる人なき寺の山椿・ すうと来て水浴ぶ鳥の水温む
SLの遠き汽笛や鯉幟・ 噴水園子等のにぎわひ風光る・
蕗の香の漂う朝の廚かな・ 退職の挨拶状手に春惜しむ・
くつろげて何よりのもの春炬燵 たんぽぽや波おだやかに岬の道・
日だまりに固まりてありいぬふぐり・ いぬふぐり冷たき風の中を行く
竣工の背にあたたかき春日受け・ ふる里の音なつかしく芹の水
喧噪を一歩抜けだし春の風・ 庭掃ける祖母の背丸き春日かな
塗りかけの刷毛跡濡らし春時雨・ 霜柱踏む人もなき日陰かな
惑星の揃ひし春の夕べかな 白鳥の旅立ち近き水の色
休憩の工事現場の長閑なる・ 春草の伸びる勢いの春となる
杖立の杖のあふれて遍路宿・ 猫柳すりすりしたいと娘が笑う・
ハイカラな名前をつけて花菖蒲・ パソコンのキー叩く音月おぼろ
古寺の牡丹に淡き日をのせて デパートの冬物一掃セールの日・
建設の疲れの残る朝寝かな・ 古時計動いてをりし山笑う
退職の先輩送り春の行く・ 春風や振り子止まった古時計・
試運転終えて家路の月朧・ 春炬燵邪魔となる日の来りけり
大橋をくぐり行く船春うらら・ 観劇の帰りは遠し春の雨
沈丁花膨らみ増せり雨ぬくし・ 海苔ひびの一つ一つにある夕日

鼻声の尾を引いてをり春を待つ 春風や路面電車の走る街
京の旅母へみやげの桜餅・ 道草の川のぞきをり日脚伸ぶ・
春霞墨絵ぼかしに讃岐富士・ 島二つ隠してしまひ春霞・
庭石の苔の真青に春の雨・ あどけなく背なに眠る子雛祭・
打寄せる波の音にも確と春 鶯の遅き声聞く峡の道・
沈丁の一輪の香の暮れなずむ 読みかけの本そのままに聞く初音
裏山の初音に目覚め瑠璃戸繰る 自転車を漕ぎ初め子に山笑ふ
暖かやツーデーマーチの長い列・ 青菜切る音軽やかに水温む・
野仏のかたわらにゐて畑打てる・ 申し分なき釣日和瀬戸の春
ほうき星春まだ浅き夜明けかな・ 吟行の一足早き花見かな
春蘭や堀跡残る山路ゆく 護摩堂の緑に凭れて聞く初音
種売の日なり老舗の客の列 御影塔彩り添へて落ち椿・
山火事の跡生々し風は春 菜の花の香りのどけき水子仏・
春寒し丸くなりたる雀どち 白壁の白さ残りて暮れ遅し・
春霞空と海との境なく・ 竹林を音なく濡らし花の雨・
寒がりのしまいかねてる春炬燵・ 連ぎょうの道せばめたる裏通り・
寒波を蹴たて釣舟戻り来る 菜の花の香に包まれて水子仏・
早蕨の手応えの良き太さかな・ 春のゆく話のはずみ声はずみ・
草すべり興じゐる声夏来る・ 白連の窓いっぱいの白さかな・
行く春の昔を語る老婆かな・ 春風や草はむ牛の点となる・
裏山の明るくなりし竹の秋・ 遠山の薄紫に春めける
空地にも苗買ひ何となく忙し さくさくと春まだ浅き浜歩く・
出来るだけ太き株をと京菜とる・ ウインドの春めき来る明るさに
紫木蓮思ひ出多き師を偲ぶ・ 波ゆらり釣人ゆらり磯うらら
啓蟄や予定細かく書く手帳 満開の梅の香り来丘に立つ
永き日や母山ほどの草を引き・ 風紋の残りし浜の浅き春・
桃の花越に優しく讃岐富士 ばら寿司で祝ふ我家の雛祭り・
白梅の香り明るき峡の道・ 果樹園の剪定終へて酌み交す・
点々と牛点々と草萌ゆる・ 氷点下とは言へ空は春の色・
包丁の音軽やかに春隣・ 編みかけしままのセーター春立てり

出場の決まりし球児春浅し・ 緑野菜食い散らかして小鳥引く
野仏に傘とも指して梅の花 風軽きペットボトルの風車・
草を取る手元明るく日脚伸ぶ・ 引越しの荷物積み込む春の暮れ・
春近し箒離さぬ立ち話 名刹の空の真青に糸桜・
新春を飾る広場の花の市 乗鞍の滝の音なる雪解水・
日脚伸ぶ無事到着と子の電話・ 雑踏を避けゆく京の余花の寺
釣人の迎えの舟や日脚伸ぶ 緋毛氈花の野点の始まりぬ
又一人休暇の願い春の風邪・ 山つつじ遠回りして峡の道・
いさかいもゲームとさして猫の恋 甘党の母にみやげの桜餅・
立ち話つい長くなり四温晴 空青く白木蓮の高さあり・
春近し光の沖より寄せてくる リズム良きテニスの音や暮れ遅し・
春の雨土の匂ひの甦る 客迎ふ笑顔一杯シクラメン
帰省子の就職相談春炬燵・ ポーズとる娘らの笑顔の春の風・
望遠のレンズの先の花杏・ 朝桜蜜吸う鳥の通ひ来て・
幕開けの待つ間ざわめき春夕べ・ 奥津峡流れに余花の影落し・
玄関に置き桜草出窓にも 轍跡一直線に車前草(しゃぜんそう=オオバコのこと)
雛祭り子らの作りし紙雛も SLの音遠くなり豆の花・
池を干す底に残りし春の水・ 夏の香の匂ふうなじの白さかな・
三月の行事の多き予定表・ 奥宮の神の使ひの毛虫とも・
噴水に子らのはしゃぎ水温む・ コーヒーの香を楽しみつ柿の花・

道祖神拝みここより余花の旅・ 道草の子等にぎやかに水温む
高原に放てる牛や若葉風・ 駅までの歩いて五分犬ふぐり・
土を割る竹の子どれもたくましく・ 永き日の話題の尽きぬ長電話
友を追ひ残雪深き野麦越ゆ・ 囀に老いたる母の耳傾げ
検診の結果に安堵春の風・ 海棠の花重さうに雨上がる
杣道の土柔はらかき春の山 若芽採る瀬戸の大橋指呼にして
観劇の熱醒めやらず春の宵 重ね着の彩りの美しき紙雛・
伝説の飛梅といふ土産かな 寒釣の袖伝ふ雨島煙る
土筆摘む記憶たよりに畦道を 写生する手元明るく四温晴・
紙芯が材料となる紙雛 四温晴てふ明るさの瀬戸の海
双蝶のもつれゆく空真青なる・ 快音の響く球場山笑ふ
囀や箒片手に立話 刀打つリズムのありて春隣
長編の読みかけしまま暮遅し 椎茸のほだ木伏せ終へ春の山
定年のまた近づきぬ燕来る 歌舞伎来る門前町の春近し
ままごとの土の団子の長閑なる 野良人の声伸びやかに日脚伸ぶ・
マネキンの装ひの皆春の色 風花の一山奪う勢ひかな  先生参考句
玻璃越の日差し明るき雛の宿 早春の色を宿して空の蒼
園児らの列にぎやかに日脚伸ぶ 売出しの幟色褪せ冴返る
居眠りもあくびもありて春隣 妻風邪に一と日水仕を代役す  先生参考句
夕月や早や登り来て梅の影 吊り橋のゆらり揺られて藤の花  松野町俳句ポスト佳作

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