原発事故に思う

 原子力発電所での事故はタブーである。ここでは、すべてがパーフェクトでなければならない。それにも

関わらず相変わらず大小のトラブルが絶えない。そして、今回はかつてない大きな事故が起きてしまった。

 事故は原子力発電所での二次系と言われている蒸気タービン系統の大きな配管が破裂した。この事故

により下請け会社の従業員の多くが死傷した。これが一次系の事故だったら放射能漏れは必至だったろう。

場合によってはチェルノブイリのような大惨事になっていたかも知れない。

 原子力発電所の構造はインターネット上でも詳しく知ることが出来る。形にはいくつかあるようだが、今回、

事故が発生した美浜原発3号機の場合の構造を見てみよう。原子炉では核燃料が中性子により崩壊する。

この時発生する熱を大量の循環水で冷やしている。これを一次系という。この熱水により蒸気発生器で大量

の蒸気を作っている。この蒸気で蒸気タービンを回し発電している。蒸気発生器で発生させた蒸気配管以降

を二次系といっている。蒸気タービンを通った蒸気は熱エネルギーを失い復水器で熱水に戻る。この復水器

から出たところで熱水が吹き出した。熱エネルギーを失ったとは言え高温高圧の水である。吹き出せば大きな

事故になるのは必至であった。

 事故に遭われた犠牲者のみなさんにとって大変不幸な事故とは言え、これが一次系で起きていたらどうなる

だろうか。一次系の水は直接核燃料に触れている水である。この水が一度に大量に漏れ出せば原子炉は

空だき状態になってしまう。これを防ぐために、核反応を緊急停止させる設備や炉心の過熱を防ぐための

緊急冷却設備は設置されているようだが、大事故は得てして予期しないことが重なるものである。冷却水の

供給が間に合わないような事があれば大災害になりかねない。

 旧ソ連では二度もこの種の大きな事故を起こしている。一度は冷戦時代の原子力潜水艦の原子炉で冷却水

系統に水漏れが生じ、あわや原子炉崩壊につながりかねないような事故があった。この時の様子は映画にも

なっているので関心があれば見ていただきたい。そして、もう一度はチェルノブイリの事故である。メルトダウン

寸前にまで進んだ事故は大量の放射能を地球上にまき散らした。そして今もなお崩壊した炉心周辺は大量の

放射能を出し続けている。

 事故は、いつどのような形で起きるか分からない。すべては人間がしている事だから完全と言うことはあり

得ない。今回、事故があった配管は設置以来、更新された事のない配管だった。原子力発電所も建設以来

三十年近く過ぎた設備が少なくない。すべてが老朽化している。老朽化が進めば進むほど毎年の検査は欠かせ

ない。しかし、昨今のコストダウンの嵐の中で検査費用も削減されていたのではないだろうか。

 原子力発電所だけでなく、高度経済成長時代に建設された多くの製造設備が老朽化している。しかし、厳しい

経営環境は設備点検費用まで削減を迫っている。そんな中で、いかに安全を維持するか当事者にとっては頭の

痛い話である。この種の事故は現場の怠慢と言うより経営サイドの責任問題である。それを現場に押しつけて

きた経営トップの責任だと言っても過言ではない。また、同様の設備を持つ企業は原子力発電所だけではない。

今回の事故を教訓に老朽化した設備の安全をどう維持していくべきか、他の会社の事故で済ます事なく真剣に

検討して貰いたい。

追記

 関西電力では他の原発についても順次運転を停止して点検を行っているが、事故を起こした二次系の点検

だけでなく、設備全体の点検も実施して貰いたい。得てして一度あることは二度あるという。特に心配をしている

のは一次系と言われる原子炉周辺の安全性の問題である。

                                                  2004年8月19日掲載

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