ええじゃないか

 ここに、こんな記事があります。これは朝日新聞が実施したアンケートの結果です。「あなたは何を信じますか」という

質問に対して答えたものです。その中で信用すると答えた数字で一番低いのは政治家でした。信用すると答えた人は

わずかに15パーセントの人でした。悲しむべき結果だとは思いませんか。まします混迷を深める日本にあって将来の

日本のすすむべき方向を決めるのは政治家です。日本丸という船の舵取り役は政治家なのです。その政治家に対して

信用が出来ないと言う人が圧倒的に多いのです。まさに日本丸の行く末は風雲の灯火だと言っても過言ではありません。

 ちなみに政治家が15パーセント、占いが20パーセント、銀行が51パーセント、警察が65パーセント、天気予報は

92パーセントとなっています。昔は銀行への使用度が高く、天気予報の低いのが一般的でした。しかし、この調査を

見る限り見事に世相を表しているようです。

 信ずるべきものが信じられなくなったらどうなるのでしょうか。江戸末期、それまでの絶対的な権力だった幕府が力を

失い、武士社会は形骸化して崩壊寸前にありました。人々は拠り所をなくし、秩序を失いました。その頃流行ったのが

「ええじゃないか」です。天から伊勢神宮のお札が降り、それがきっかけとなって「ええじゃないか、ええじゃないか」と

大衆が騒ぎ始めたのです。その騒ぎは燎原の火の如く日本中に広まっていったのです。政治にもの申す方法を知ら

なかった大衆にとって、唯一、自分たちの意志を表現する方法だったのかも知れません。この時の様子は今村昌平

監督の映画にもなって紹介されました。その場にいたら私も一緒に「ええじゃないか」とやっていたかも知れません。

選挙で意思表示をしたくてもその対象となるべき人がいない。さりとて、直接行動も示威行為もままならないとしたら

「ええじゃないか」とやらざるを得ないような気持ちです。

 そんな時、「ええじゃないか」とパソコンで検索をしてみますと、平成の「ええじゃないか」運動を提唱している人達が

いるのです。色んな思想の人達の集まりのように見えますが、誰しも考えることは同じなんだなと感じました。

 時代が変わる時と言うのは、どんな状態なのでしょうか。江戸時代末期から明治初頭にかけて生きてきたならば、

簡単に比較してみることは出来るのですが、書物だけでは現実味をもって伝わって来ません。しかし、実体験はなく

ても世相や時代の変わる時と言うのは万国共通のような気がします。

 今の世は江戸時代末期と異なり、世界中が同時進行形のように大きく変化しつつあるような気がします。最早、

既成の権力機構や社会制度ではだめな時代なのかも知れません。価値観が変わり、ものの見方も大きく変化して

きました。ましてや、世界中のあらゆる動きが居ながらにして分かる時代になりました。一国だけがこっそりと何かを

することは不可能に近い状態です。振り返ってみれば東西のドイツを隔てる壁が取り壊された時が新しい時代の

始まりだったのではないでしょうか。

 ともあれ、日本国内では信ずるものも心の拠り所もなく、虚ろな日々を送っている人が少なくありません。どうすれば

時代を変えることが出来るのか、何もしなくても波が砂浜の形を変えるように変わっていくのか、自分が自覚していなく

てもいつの間にか世の中が変わっているのか、誰もこれから先を予測することは出来ません。今はしばらく時の流れの

中で、世の中の変化をじっと見守っているほうが良いのかも知れません。

                                                  2003年1月18日掲載

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