海岸には松の木を植えよう、山にはドングリの木を植えよう


 私が旅行した国の中にベトナムがありました。ここはかつてアメリカ軍が軍事介入し、その

ため戦争が泥沼化し両国に多くの戦死者を出したところです。アメリカ軍はベトコンと言われた

ゲリラを駆り出すため広大な密林にナパーム弾を投下し密林を焼き払いました。その上、枯れ

葉剤(発ガン性が強いダイオキシンを含んだ除草剤)という猛毒の化学薬品を撒いて密林を

枯れ死させました。

 その一部には海岸近くのマングローブ林も入っていました。そのためメコン川下流域の広大

なマングローブ林がなくなってしまいました。私達が訪ねたときにはベトナム戦争後に植林した

というマングローブが成長し見事な林になっていました。

 マングローブ林は上流からの土砂の流出を防ぐと伴に魚たちの生息場所になっています。

豊かな漁業資源を育んでいます。メコン川を遡っていきますと川の流れを遮るかのように張ら

れた網がありました。これは潮の満ち干を利用して魚を捕る網でした。長く大きな網の一角に

は小さな小屋が作られていました。これは漁民の監視小屋であり寝起きをしている場所でした。

また、マングローブ林の周辺にも網が仕掛けられていました。またこの網の端にも小さな小屋

がありました。このようにメコン川下流域は豊かな漁業資源に恵まれたところなのです。

 このように広大なマングローブ林は生活に欠かせない場所であるばかりでなく自然の驚異

からも人間を守っています。海からの波を弱め風を遮っています。自然が作り出した防波堤に

なっているのです。

 ところが東南アジア各地ではマングローブ林が伐採され炭に加工されて日本に輸出されて

いるというのです。私達がキャンプやバーベキューなどの時使うあの炭でしょうか。

 今回、インドネシアのスマトラ島沖で発生した巨大地震は津波となって沿岸地方を襲い甚大

な被害をもたらしました。被害地域の中にはマングローブが伐採され、そのために被害を大き

くした地域があるのではないかと思うと心が痛みます。

 被災地の方々にはこの場を借りて心からお見舞い申し上げます。私達が旅行中の出来事

でしたからピースボートの中では緊急にカンパが行われました。カンパ金は生活必要物資を

購入し第48回クルーズにて届けて貰うようにしました。

 さて、こんな記事が先日新聞に載っていました。その人の意見では海岸近くに松の木を植え

て津波などの防災に備えようと言う提案でした。私は以前よく似た提案を書いた事がありました。

それは海岸に防波堤を築くよりは海岸にある砂浜を保護する方が大切だと思ったからです。

 それは昨年の台風時のことでした。例年になく海が荒れ海岸周辺は軒並み高潮の被害を

受けました。その後、地元の王子ヶ岳下の海岸を走ってみましたら至るところで波よけの堤が

壊れていました。明らかに打ち寄せる波の力によって壊されたものでした。沖に向かって広い

砂浜さえあれば波は砂浜によってエネルギーを奪われここまで破壊されることはなかったの

ではないかと思いました。

 同じような事は海岸に植えられた松林などについても言えるのではないでしょうか。昔から

日本の海岸の美しさを「白砂青松」と言います。海岸に白い砂浜と松林は付き物でした。しかし、

最近は松枯れなどの影響もあってか松林が少なくなっています。

 この松林は海から吹き寄せる風を遮り海岸の砂が失われるのを防いでいます。松は他の

植物に比較すると海水には大変強い植物です。沖縄周辺を除く日本では熱帯や亜熱帯のよう

にマングローブは育ちませんが、その点、松は日本の気候風土に合った植物です。これらは

近い将来必ずやってくると言われている津波にも波消しブロックや砂浜と同じように役に立つ

のではないかと思われます。また、コンクリート製の無粋な防波堤より美しく、海岸に良く似合

います。

 最近、杉花粉により鼻水が出て困るとか目がかゆくてたまらないという人が増えています。

いわゆる花粉症ですが、今年は大量に発生することが懸念されています。日本は山国です。

昔から奥深い山にまで植林を行い杉や檜を育ててきました。ところが外材の安さに押されて

これら杉や檜が使われなくなりました。いまや大木となった杉や檜がたくさん打ち捨てられて

います。それらが花粉症の原因になっているのです。 

 また、杉や檜は根が浅く山の崩壊を阻止するような力はありません。その点ブナや樫と言った

広葉樹は根を深く張り巡らし、かつその葉は腐葉土となって山を肥やします。そればかりでなく

保水力を高め一種のダムのような働きもします。また、これらの木の実は山の動物たちの餌

になります。杉や檜の林ばかりになってしまうと山の動物たちは餌を求めて里に下りてきます。

その結果、熊やイノシシに襲われたという事件が絶えないのです。

 「山は海を肥やす」と言います。最近そのことに気がついた漁師さん達が山に入り植林をした

という話がニュースになりました。つまり落ち葉が腐葉土になり腐葉土から説けだした養分が

海のプランクトンを発生させ、それが魚たちの餌になると言う訳なのです。「山は海を肥やす」

とはうまく表現したものです。

 地球温暖化による災害が懸念されています。山には広葉樹を海岸には松などの針葉樹を

植えれば完全とは言えないまでも山からの被害も海からの被害も幾分かは少なくすることが

出来るのではないでしょうか。

                                        2005年2月25日掲載

政治経済社会問題のページへ戻る

ホームへ戻る