誤った歴史認識

 いま中国では日本に対して激しい抗議行動が起きている。何故、今なのか多少の疑問を感じ

つつ、この文を書いている。折しも図書館で目に入ったのが「その時、歴史が動いた」シリーズ

の「満州事変 関東軍 独走す」というDVDだった。ちなみに「その時、歴史が動いた」は、NHK

が色んな歴史的な出来事を検証した番組である。

 関東軍と聞いて、「ああ旧満州にいた日本軍」の事だと分かる人は少なくなった。太平洋戦争

前には旧満州を含む一帯を関東省と言っていた。日本はこの地域に於ける権益を守るために

軍隊を置いていた。この軍隊の事を関東軍と呼んでいた。

 その関東軍が密かに満州鉄道を爆破したことから満州事変は始まった。この爆破事件は当

時、関東軍参謀であった石原莞爾らが画策したでっち上げ事件だった。そもそも軍事行動は

天皇の裁可なしに実行することは出来ない行動であったし、天皇の統帥権を侵した国家的な

犯罪とも言えるものであった。

 しかし、時の軍閥はもとより内閣でさえ、その行動を追認してしまった。天皇からの下問に対

しても明確な返答をしないままに、ずるずると太平洋戦争にまで進んで行ったのである。この

満州鉄道爆破事件の後、関東軍は旧満州に傀儡政権を作り中国との全面戦争へと戦線を拡

大していった。今も石原莞爾その人が計画した満鉄爆破に至るまでの機密文書が残っている。

 その後にはアメリカをも敵に回して戦うという太平洋戦争へと突入していくことになるのである。

これら一連の無謀な戦争によって他国民だけでなく、我々日本人も多くの同胞が犠牲になって

きた。だからこそ憲法九条を柱とする平和憲法を制定したのではないだろうか。

 こうした戦争を画策し遂行してきたもの達が合祀されているのが靖国神社である。その神社

を参拝する小泉首相や閣僚達を中国国民が許すはずがない。小泉さんは、そこのところが分

かっているのだろうか。もし、分かって参拝しているのであれば、これも又、国家的な犯罪では

ないだろうか。

 今、中国で起きている抗議行動は決して偶発的な事ではない。過去を遡ればほんの六十数

年前、関東軍は満州国という傀儡政権を作り中国全土を植民地化しようとしてきた事なのであ

る。従って、歴史認識が足りないのは中国人ではなく、我々自身であることを自覚しなくてはな

らない。

 また、中国国民にももっと歴史を良く読んで貰いたい。かつて清国を倒し今日の中国を作った

孫文は一時期、中国を追われ日本へ逃げてきたことがあった。その時、犬飼毅(1932年5月

15日、軍人の手によって暗殺される)は手厚く保護しかくまっている。孫文なくして今日の中国

があったかどうか分からない。孫文はそんな大事な人であった。日本人の中にも今日の中国の

恩人とも言えるような人がいたのである。

 今、いたずらに感情論に走ることは禁物である。ニュースで見る限りデモ隊の行動は確かに

行き過ぎていた。また、それを阻止すべき警察官はあえて止めようとはしなかった。また、日本

人留学生が暴徒に襲われて怪我をした。それはそれとして素直に中国国民に耳を貸す余裕を

持ちたいものである。

 一方、日本と中国政府は何をしているのだろうか。問題を解決すべき両国政府が何もしてい

ないではないか。日本は首相や多くの閣僚が靖国神社を参拝し、中国国民の感情を逆撫です

るような教科書を作り、日の丸の掲揚や君が代の斉唱を学校等で強要している。

 中国側は両国間に横たわるガス田の開発を一方的に進め、また、多くの中国人犯罪者を送

り込んでいる。そして、戦後の日本の正しい姿を伝えようとしていない。各種コピー製品の製造

を取り締まることなく各国から批判を浴びている。これが近代国家と言えるのだろうか。清国時

代の中国と同じではないだろうか。

 ともかく、両国政府はもっと大人になって問題解決を図るべきである。歴史をさかのぼれば日

本は中国から多くのものを学び輸入してきた。長く、隣人としてのつき合いをしてきた間柄である。

 今、一番懸念されるのは日本国民の感情である。時あたかも憲法改正論議が自民党を中心

に進んでいる。民主党も憲法改正に賛成している。そんな状況にあって中国との感情論が高ま

れば憲法九条の改正も難しい事ではない。これも又、歴史の皮肉と言うものだろうか。

 隣人同士は仲良く平和を希求する姿勢がなくてはいけない。中東やアフリカのように民族同

士が対立している事が幸せなことであろうか。

                                      2005年4月17日掲載

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