負の遺産アスベスト

 今、アスベストが大問題になっている。鉱物資源なので火に強く、綿のようなので断熱材として

利用されてきた。また、スレート等のようにセメントと混ぜて壁や瓦として使われてきた。聞けば

ふすま紙に混ぜて燃えにくくしていたようだ。思わぬところにもアスベストは利用されてきた。

 そのアスベストが中皮腫という癌の原因になるとして大問題になっている。かつて、一度問題

になり、その時、使用中止や完全撤去されたものと思っていたが、どうやらそうではなかったら

しい。確たる対処方法や今後の対策などもないままに、その時だけの事として処理されてしまっ

ていたようだ。従って、今回、「クボタ」の公表がなかったら、このまま放置され続けていたかも

知れない。

 今、問題になっていることは過去の事が多い。有用な材料として色んなものに加工されて使わ

れていた頃の事が問題になっている。その頃は扱い方も雑で、アスベストの粉塵がもうもうと舞

立つような職場でも十分な粉塵対策もなされないままで作業していたようだ。従って、体の中に

は多くの粉塵が取り込まれてしまった。

 また、工場内だけでなく周辺地域にも飛散した可能性があるようだ。中にはお父さんが着てい

た作業服を洗濯する際に吸い込んで発症したとか、お父さんが使っていた防塵マスクを面白半

分に被って遊んだ子供までもが数十年後に発病しているようだ。

 アスベストによる中皮腫の発症は遅い。数十年を経過した後で発症している。それだけに盛

んに使われていた頃には問題視されることが少なかったようだ。また、発症する人がいても限

られた人だけの職業病として扱われてきた。

 しかし、天井裏に入って電気配線工事をしていた電工さんまでもが発症し、建物に使われて

いたアスベストが原因ではないかと言われている。また、工場でもスチーム配管などの断熱材

として使われてきたので配管工事や保温工事をしていた人も発症している。このように一般に

は人の目に触れないようなところにもたくさん使われてきた。これらが、その後どうなっているの

か追跡調査は行われていない。従って、どれくらいの量のものが、どれくらいの範囲に飛散して

いるのか、時期を失したとは言え調査が必要だ。

 今まで多くのビルが壊されてきた。そのビルの中には大量のアスベストが使われていたはず

だ。土埃と一緒にまき散らされたことは十分考えられる。阪神大震災の時には多くのビルが倒

壊し、その後、撤去された。その際にも大量のアスベストが飛散したことは疑う余地がない。そ

れらは多くの人の体に取り込まれており、高齢者は発症する前に亡くなることはあっても、その

頃、子供だった人や若い人達が発症しないと断言できるだろうか。これから負の遺産を抱えた

まま、発症の時を待たなければならない。

 私達は便利なことや快適な生活を得るために多くのものを作り出し利用してきた。アスベスト

もその一つだが、その他にもトランスオイル等に使われてきたPCB(ポリ塩化ビフェニール)、

クーラーや冷蔵庫の冷媒として使われてきたフロンガス、そして、今なお全容が明らかになって

いない多種多様な環境ホルモン等がある。

 私達は、こうした多くの負の遺産を作り出し、そのまま二十一世紀に持ち込んでしまった。そ

れを利用して通り過ぎた人間は良いとしても、何ら解決策のないままに受け取らされた人間に

してみれば大変な迷惑な話だ。私達は責任を持って、これら負の遺産の対策を考えなくてはな

らない。

                                       2005年8月14日掲載

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