安政の大地震

 安政年間は日本の激動期の一つである。何故このように、ほんの数年間に大きな出来事が

集中したのであろうか。その出来事とは自然災害であり、政治的な出来事であり、人間が起こ

した事件であった。まず、その出来事を年表でふり返ってみよう。

安政期略年表(江戸東京博物館安政の大地震特別展より)

嘉永六年(1853年)

2月2日  関東地方に地震(小田原を中心に多くの家屋が倒壊)

6月3日  アメリカ東インド艦隊司令長官ペリー率いる軍艦四隻が浦賀に来航

                                      (俗に言う黒船来航)

7月18日 ロシア使節プチャーチン率いる軍艦四隻が長崎に来航

嘉永七年、安政元年(1854年)

3月3日   日米和親条約の締結(後にイギリス、ロシア、オランダとも締結)

4月6日   京都大火(禁裏より出火して上京一帯に延焼)

6月14日  伊賀上野地方に大地震

9月23日  ロシア艦の近海出没により天皇の命を受けた七社七寺が祈祷

11月4日  東海地方に大地震、大津波

11月5日  南海地方に大地震、大津波

11月27日 元号を安政と改元

      (祈祷をしても効き目はなく、改元をして出直しを図ろうとしたのではなかろうか)

12月28日 江戸大火(神田多町から江戸橋焼失)

安政二年(1855年)

3月2日   江戸大火(小網町から浅草焼失)

10月2日  安政の江戸大地震

安政三年(1856年)

8月25日  江戸大風雨、大洪水

安政五年(1858年)

2月10日  江戸大火(日本橋安針町より出火)

6月19日  日米修好通商条約の締結

      (後にオランダ、ロシア、イギリス、フランスとも締結された。通称安政の五カ国条約)

6月頃    長崎にコレラ発生(のちに全国に流行)

9月7日   安政の大獄が始まる

      (京都で小浜藩浪士の逮捕、以後尊皇攘夷派志士の逮捕が続く)

11月15日 江戸大火(神田 日本橋焼失)

安政六年(1859年)

6月     神奈川、長崎、箱舘の開港(外国との貿易の開始)

10月17日 江戸城本丸焼失

安政七年(1860年)

3月3日   桜田門外の変(大老 井伊直弼の暗殺)

 安政七年の三月三日、大老井伊直弼は江戸城桜田門外に於いて水戸浪士達による襲撃を

受けた。三月とは言え江戸はまだまだ春遠く雪が降っていた。幕府の大老と言えば今の内閣

総理大臣である。その内閣総理大臣が暗殺された数年後の1866年には薩長同盟が結ばれ、

1867年には大政奉還が行われ、更に1878年には明治維新が始まり、三百年に及ぶ徳川

幕府の支配体制が終止符を打つことになる。いわば日本の歴史の大きな節目が一連の天災

や事件が相次いだ時期である。

 これを見て皆さんは何を思われるだろうか。私には、これらが単なる天災や事件の連続とは

思えないのである。年表には日本の根幹を揺るがしかねないような自然災害(相次ぐ大地震)

と事件(黒船来航)がまるでダブルパンチのように続いている。その間にも、江戸と京都という

二大都市での相次ぐ大火。これで人々が騒がぬはずがない。政治に関係のない人々も心穏

やかならぬ日々を過ごしていたのではないだろうか。安政二年十月の大地震の後、翌年の八

月には台風による大洪水が起きている。大地震の復興途上の大洪水は想像を絶するような

被害をもたらしたに違いない。天皇家ならずとも祈祷をしたくなったのは無理からぬ事である。

そして元号を嘉永から安政に変えてみたけれど、その効果はなかった。(昔は何か良からぬ

事が続くと元号を変えて出直しを図った)

 確かに、一連の天災と事件の関連を見出すことは難しいのだが、何かありそうだと思うのは

私だけだろうか。今の時代は頻々として世界規模の大地震(スマトラ沖大地震、パキスタン大

地震、新潟中越地震)が続発している。それは思いもしなかったようなところ(阪神淡路大震災、

福岡県西方沖地震)からも発生している。アメリカ本土に対する未曾有のテロ攻撃(9.11)、

その後のテロに対する報復攻撃(オサマ・ビン・ラディンやアルカイダの掃討と称してのアフガ

ニスタンへの侵攻)、大量破壊兵器を持っていると難癖を付けてのイラク侵攻(これはフセイン

の手から石油を奪うための侵攻だと言われている)、旧ソ連領内の内戦(チェチェン問題も旧

ソ連領内の石油の利権を巡っての争い)やテロ、アフリカ諸国の内戦と絶えることのない難民

とエイズの大感染、大型化するハリケーンや台風、枚挙にいとまがないほどの天災や事件が

続発している。

 そして、お金だけが、すべてを制するような世の中を作ってしまい、人間にとって、もっとも大

切な慎ましさや優しさが失われてしまった。家庭内に愛はなく、心淋しい思いをしている子がた

くさんいる。私は、これら一連の大規模な天災を今の時代に於ける大いなる天からの警鐘だと

思っている。日本の国内に限っても老人も子供も将来展望を失い心が虚ろになっている。私は、

このことを「魂が漂泊している」と言っている。恐らく、世界中の多くの人々も何となく心落ち着か

ない日々を過ごしているのではないだろうか。

 「魂が漂泊している」時代は、先の安政年間と重なって見えるのである。どうかこの上、更に

大きな天災が天上からの鉄槌として下されることのないように、私達自身が心正しく生きていく

ための拠り所を見出さなくてはならない。課題は大きく膨大ではあるが、心を一つにすれば出

来ないことではない。今すぐに戦争をやめ、お金だけが全てではない世の中を作ることが、まず

必要なのではないだろうか。

追記

 この地球環境を破壊したのは、たった百年あまりの間の石炭や石油と言った化石燃料と言

われるものの大量消費によるものだ。人間は地中深く封じ込められた過去の遺産を迷うこと

なく大量消費し今日の文明を築き上げてきた。しかし、これはパンドラの箱を開けてしまうこと

に等しく、大きな負の遺産を残すことになってしまった。

 この先も当分は消えることのないフロンガスによるオゾン層の破壊、石油から作る化学物質

による環境汚染、燃料として使った後の二酸化炭素(炭酸ガス)による地球温暖化、今や大量

に飼育している牛の吐き出すゲップ(メタンガス)さえも地球温暖化に繋がっていると言われて

いる。(牛の飼育にも大量の化学肥料によって育てられたトウモロコシが飼料として使われて

いる。メタンガスは二酸化炭素の21〜25倍もの温室効果があると言われている。)

 石油の利権は、ほんの一握りの巨大企業に握られ、その企業はアメリカ合衆国という軍事

国家を動かして利権の確保に狂奔している。むろん日本もそのアメリカをお金と軍事力で支援

している。しかし、この石油も確実に先細りの状態である。この先、石油の争奪戦は更に激化

するに違いない。

 かけがえのない地球環境を破壊してまでも汲み尽くさなければならないものなのだろうか。こ

れ以上、地球環境を壊さないためにも脱石油の生活を考えなければならない。私達のかけが

えのない宇宙船地球号を沈没させてまで、今の生活を続ける事は自殺行為に等しい。何かし

ら操り人形のように大量生産、大量消費の生活に慣らされてきたのではないだろうか。消費は

美徳だというのは、まやかしだと言うことに気付かなければならない時が来ていると思うのは

私だけであろうか。

追記の記事に詳しい本を紹介しておこう。この本を読まれれば誰でもこのままにしておいて良

いのだろうかと思われるに違いない。

「ピークオイル」 著者リンダ・マクウエイグ  益岡 賢訳  作品社

                                     2005年11月19日掲載

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